一方、これからの大都市は、どんな未来図を描こうとしているのか。「都市再構築戦略検討委員会 中間とりまとめ」(2013年。国土交通省)によると、大都市の第一のテーマはやはり「国際競争力の向上」。従来のように国内の市場規模に頼ることなく、国際的な競争力を備え、世界から情報・人材・資金を集めることを基本路線としている。また、オンだけでなくオフの魅力にあふれていることも、大事な要件である。これらの方向性から、「高度外国人材」にとって働きやすく、住みやすいことが一つのポイントだということが読み取れる。参考までに、日本の大都市における高度外国人材の増加率は、2007~2011年までの4年間で6~14%の伸びを示した。しかし、シンガポールは同時期に76%と、後塵を拝しているのが現状だ。
それでも、巻き返しへの期待値は高い。東京都の市街地再開発事業のうち、事業中地区は42、予定地区は13(2014年7月31日現在)。主要なプロジェクトを挙げてみると、大規模な再編により、新たな商業施設の誕生や、国際競争力豊かな産業が育つための環境整備などに注力していく渋谷エリア。さらなるグローバル化、高度情報化に向けて、国際ビジネス戦略拠点としての再構築が進行している大手町エリア。また、日本橋エリアは、より商業・観光拠点にふさわしい一帯へと進化していく。東京は世界に魅力を発信し、人や情報を惹きつける都市へと、着実に歩んでいるのだ。
省エネ技術が支える
快適なビジネスと暮らし
今後の都市を考える上では、地域ぐるみでのエネルギーマネジメントも忘れてはならない。東京都の場合、需要側が取り組むべき目標を示し、事業者や都民の省エネ・節電の成果を明確にするという観点から、2014年12月に「2030年までに東京のエネルギー消費量を2000年比で30%削減」という新たな目標を設定した。これにより、事業所や家庭など、各部門の省エネ対策への後押しをさらに進めていくと考えられる。ここで目標を達成するためのキーとなるのは、先進的な技術だろう。
例えば、都心部で大規模なオフィスビルの誕生が相次ぐ現在、従来の建物とあわせて大量に消費される1棟あたりのエネルギーをどのように管理・コントロールしていくかは重要な課題だ。オフィス単位で見ても、エネルギーの有効利用や光熱費のコスト削減は、いまや経営に不可欠な視点である。
省エネ技術はICTなどの活用で効率性を高めながら、産業分野、民生分野ともに多様なシチュエーションでの導入が進んでいる。電力と熱を同時に生産する「コージェネレーションシステム」は病院、ホテル、スポーツ施設、近年では飲食店などでも普及。また家庭用コージェネのシェアも伸びているなど、まさに「生活の一部」となりつつある技術の代表例だ。
一つ、興味深いデータがある。東京都内の最終エネルギー消費と総生産の推移を比較すると、2001年以降、エネルギーや資源の消費量は減少傾向にあるのに対して、経済成長は上向いているのだ。つまり、両者の分離傾向(デカップリング)が進めば進むほど、「都市力は上がっている」と判断する指標にもなる。変遷を追いながら、日本の未来について、思いをはせてみてはいかがだろうか。