エマルジョン燃料の
既成概念を覆す高品質

国内企業に加え新興国の電力会社からも
引き合いが来ています

山本泰弘●やまもと・やすひろ
VanaH WORLD WATER INTERNATIONAL JAPAN株式会社 副社長

大手電機メーカーのエンジニアを経て、VanaH WWIJに入社。今回の次世代型燃料の開発をリードしたほか、自社工場の設計なども行っている。

「これまで長い間、多くの方々がエマルジョン燃料の開発に取り組んできました。しかしボイラーなどで燃焼させているうち、不具合を生じるケースが多かったのが実情です。それでも何とかこの技術で地球温暖化防止やエネルギー問題の解決に貢献できないか──。我々はそうした思いから、あえてハードルの高い研究開発に挑戦し、このたび従来のエマルジョン燃料のイメージとはまったく異なる次世代型燃料の実現に成功しました」

VanaH WORLD WATER INTERNATIONAL JAPAN(以下、VanaH WWIJ)の副社長を務める山本泰弘氏は、チャレンジの成果に自信を示す。

そもそもエマルジョン燃料とは、添加剤(界面活性剤)を用いることなどにより、油と水を混合させた燃料のこと。水と聞けば意外だが、原理としては油の表面積拡大により燃焼効率をアップさせ、これまでより少ない燃料で、変わらないパワーを得る仕組みだ。その結果、燃料コストを削減できるのはもちろんのこと、環境負荷、例えばCO2、NOX、SOXなどの排出量も少なくできるのである。

しかし、エマルジョン燃料の原理は成り立っても、実用化段階には大きな課題があった。


いずれも、右端が「VanaH PLASMA FUSION」で精製した加水率50%の燃料。左端の100%の燃料と変わらない。中央の従来技術で精製した燃料は、一定時間たつと水と油が分離してしまう。

従来のエマルジョン燃料は短時間で油と水が「分離」してしまうため、大量の添加剤を投入せざるを得ず、燃料の粘性が増してボイラーを故障させるという例が見られたのだ。また燃焼させても十分なパワーが出なかったり、加水率が20~30%までにとどまるため、燃料コストの削減が小幅にすぎない例も少なくなかった。

これら諸課題をVanaH WWIJはどのように解決したのか。山本氏の説明はこうだ。

「当社は、水素イオン化・炭素イオン化の実現による超微細化液体の反応技術を開発し、『VanaH PLASMA FUSION(バナエイチ・プラズマ・フュージョン)』と名づけました。この技術によって、油と水の混合というレベルを超えた、ある種の融合状態を実現し、従来のエマルジョン燃料に見られた分離を回避することが可能になったのです。添加剤の研究も重ね、わずか0.5~1.0%の量に抑えることができました。そのうえ重油、軽油、灯油、バイオディーゼル燃料のどれについても、加水率約50%を可能にしたのです」


独自技術により、精製装置が水を超微細化。加水率が高く、高品質のエマルジョン燃料を作る。