初期費用ゼロで
環境貢献もできると注目

田中離有●たなか・りう
株式会社カクイチ 代表取締役社長

1985年に慶應義塾大学卒業。90年、ジョージタウン大学でMBAを取得し、(株)カクイチに入社。2001年より代表取締役副社長。14年より現職。

ガレージの上で太陽光発電──。そんな光景が、いま全国で着々と広がっている。ガレージや倉庫の屋根を太陽光発電スペースとしてレンタル。オーナーは、貸与する屋根の大きさに合わせて一定の賃料を受け取る仕組みだ。

自ら太陽光発電システムを設置するのではないから、初期費用はゼロ。環境保護に貢献しながら、賃料をはじめ多彩なメリットを得られるとあって注目の的となっている。

このサービスを手がけ、およそ1年で2000件を超える申し込みを得た企業がある。優れた強度を持つ鉄骨ガレージ、倉庫などの製造販売で高い評価を得るカクイチだ。自社の顧客を対象に「太陽光発電パートナー」事業を進めている。同社では東日本大震災をきっかけに、まず直営のショールームで太陽光発電を開始した。その経緯には「地域密着」「顧客との関係づくり」を一貫して重視してきた姿勢が強く表れている。

カクイチは、1980年代から他社に先駆けてショールームを展開。「現場で物を見せて販売する」手法にこだわってきた。一方で各地のショールームを「地域の方に気軽に来てもらえるコミュニケーションスペース」と位置づけ、利用可能なスペースを開放してきた。そうしたなかで東日本大震災が起こったのだ。太陽光発電を開始した背景を同社代表取締役社長の田中離有氏は次のように語る。

「地域密着型のショールームとして多くの方に利用いただいているこの場所に何かあったとき、非常用電源が必要だと考えました。幸い弊社の鉄骨ガレージなら十分な強度がある。それなら各ショールームのガレージの屋根などで太陽光発電を行うべきだと考えたのです」

そこで、全国におよそ80あるショールームで、ガレージの上に太陽光発電システムを設置。その後、有効性が確認されるのと並行して、独自に「わっとわっとプロジェクト」を立ち上げ、一般家庭向けの「太陽光発電パートナー」の募集もスタートさせたというわけだ。

カクイチの「太陽光ガレージ」。全国のガレージに太陽光パネルを取り付け、「小さな発電所」を生み出していく──。カクイチでは、この事業を「わっとわっとプロジェクト」と名付けている。ロゴデザインは、電力の単位の「W」に、パートナーとカクイチが手を取り合って万歳するWINWINのイメージ。