とにかく診断書を1枚書いてもらう
子どもがいじめの被害にあった場合、親はまず子どもの話をよく聞き、学校に対して「わが子が学校でいじめにあっている」という事実を明確に伝えなければなりません。それでも学校が「知らない」「関係ない」といった態度を取り続けるようであれば、親子で、途方に暮れ、失望し、無力感に打ちひしがれることでしょう。
しかし、そこで決して諦めてはいけません。
そんなときこそ、真っ先に医師を頼るべきです。かかりつけの小児科や内科でもよいし、精神科でも構いません。とにかく医師のもとを訪れ、診断書を1枚書いてもらうのです。
精神科医である私のところにも、いじめが原因で体調を崩したり、精神的に不調を来したりした子どもが、保護者と一緒に受診に来ることがあります。受診に訪れるということは、何らかのケアを求めているからです。いじめを受けた子の話を丁寧に聞き、状態を把握し、過度のストレスによって睡眠障害などが起きていれば生活リズムの立て直しを提案する。さらに深刻な場合には、一時的に薬を処方することもあります。
こうした対応は精神科医の役割ですから、身近に信頼できる医師がいれば、診察を受ければいいでしょう。そして、心身の不調を来している旨を証明してもらうために、診断書を書いてもらえばいいでしょう。
「診断書の書き方」には要注意
ただし、この診断書の書き方によって、事態の流れは良い方にも悪い方にも変わりえます。
多くの医師は、診断名や症状、通院の必要性を簡潔に記した一般的な診断書を書きます。それ自体は間違いではありません。しかし、いじめの問題に関しては、それだけでは不十分です。場合によっては逆効果になることもあります。
たとえば、精神的ダメージを受けた患者に対して、精神科医が最も多くつける診断名の一つが「適応障害」です。
症状の内容から見れば、確かにその診断は正しい。けれども、診断名だけが記された診断書を学校に提出しても、学校側は動いてくれません。
むしろ、「精神的な病気を抱えているようだから、医師の治療に任せたほうがよい」と判断し、学校の内部に原因があり、具体的にはそれはいじめであり、その解決のためにはほかならぬ学校教師たちが動かなければいけないという根本の事実から目を背けてしまうのです。
このような場合、医師の診断書がかえって事態を悪化させてしまうことさえあります。


