「マイナス15年生」から
未知の世界に挑戦する
──真矢さんはスーツや長髪など、革新的な男役像を取り入れ、「宝塚の革命児」と呼ばれました。自分らしい表現を追求し続ける原動力は何でしょう。
【真矢】一番の動機は、宝塚に興味のなかった方々にもファンになってほしい、という思いです。そこで、5組のうち1組ぐらいは、スーツを着こなす粋な男役を提案してもいいかなと考えました。人間ウォッチングのために山手線を何周もして、現代の男性らしさを研究しましたね。
【檀】ソフト帽にスーツという出で立ちは当時の宝塚では本当に新鮮で。娘役として、あんな男役に寄り添ってみたいと自然に思わせる魅力がありました。
【真矢】男役が舞台で輝くのは、それを引き立てる娘役のおかげ。だから、娘役は大変なんです。お客様が夢を見るには、娘役の役割がとても重要です。
【檀】ありがとうございます。私は月組と星組、2つの組でトップ娘役を務めさせて頂きました。2度目のときはその責任を全うするために、自分で「大劇場での公演は4作品」と期限を切ったんです。それからは、脇目もふらず舞台に集中しました。最終公演の千秋楽、紋付袴で退団のご挨拶をしても、実感がわかなかったのですが、カーテンコールでお客様がスタンディングで拍手してくださって、ようやく自分の挑戦は間違ってなかった、やりきったのだという思いがわき上がりました。
──退団後は、映画やドラマへと活躍の場を広げています。これまでと異なる世界に戸惑いはありましたか。
【檀】舞台とは全く異なる場所に立つ心細さはありました。とにかく宝塚で培ったトップ娘役のキャリアは忘れ、まずはゼロから、1年生の気持ちでやろう、と決めていました。
【真矢】男役を長年演じてきた私は、女優としてはマイナス15年生からのスタート(笑)。でも未完成だから、新しいことにチャレンジできるんです。30代後半から、また未知の世界に挑戦できるのは楽しいものですよ。年齢や経験で「できない」と決めつけては、もったいない。蓄積があるからこそ、大人って深みがあって、面白いのではないでしょうか。
──最後に、100周年を迎える宝塚歌劇団への思い、そして女優としての「将来の夢」を聞かせてください。
【檀】宝塚の良き伝統を、どんな時代でも守り抜いてほしいと願っています。私自身はまだまだ未熟。今でも新人時代のように、日々もがいているんです。だからこそ、昨日より今日、今日より明日は、1ミリでも成長できるよう、自分を磨いていきます。
【真矢】宝塚の精神は「温故知新」。これからも若い世代も取り込みながら、さらに幅広く、懐の深い歌劇団として感動を与えていくでしょう。100年という輝かしい伝統のうえに、新しい宝塚を創り出されることを期待しています。役者の仕事は、演技を通じて人の心を動かしていくこと。明日への希望を感じてもらえる女優を目指して、挑戦を楽しんでいこうと思います。
撮影場所:ザ・リッツ・カールトン東京
協力:[真矢みき]衣裳:エスカーダ アクセサリー:フォーエバーマーク
[檀 れい]衣裳:Salvatore Ferragamo/フェラガモ・ジャパン アクセサリー:OTAZU/ロックワン(株)