中間選挙前はパフォーマンスが下がり、選挙後は上昇する傾向
――第2回の記事では、2026年後期に注目されそうなセクターとして、「情報技術」(ETFティッカー:XLK)、「資本財」(XLI)、「金融」(XLF)を挙げていただきました。11月3日には米国で中間選挙がありますが、これらのセクターに影響しますか。
【山口】セクター投資は、S&P500の上場銘柄を「世界産業分類基準(GICS)」に基づいて11のセクターに分類し、それぞれのセクターごとに複数の銘柄に投資する手法です。
※出所:ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント
「情報技術」(XLK)は、エヌビディアやアップルをはじめとする、半導体やソフトウェアなどデジタル関連の銘柄を集めています。「資本財」(XLI)は、機械、建設、物流、防衛など、インフラをつくる企業が対象で、キャタピラー、GEなどが含まれます。「金融」(XLF)は、JPモルガンチェース、ビザなど銀行、カード、保険といった企業です。いずれのセクターも、中間選挙の結果にかかわらず中長期的な成長が期待できるセクターです。
――三つのセクターが「中間選挙の結果にかかわらず中長期的な成長が期待できる」のはなぜでしょうか。
【山口】「資本財」(XLI)は、政党を超えて合意しやすい防衛支出やAIインフラ投資に関わるので、選挙の結果に関わりなく成長が期待できます。また、AIは共和党、民主党どちらにとっても重要な政策テーマなので、「情報技術」(XLK)も注目セクターです。
今後、IPOやM&Aが活発化し、融資需要が高まれば、「金融」(XLF)セクターにとって追い風となる可能性があります。また、金融規制の多くは議会ではなく連邦準備制度理事会(FRB)や証券取引委員会(SEC)が決定権を持つことが多いのですが、ねじれ議会で大型法案が成立しなくなると現在の規制環境が大きくは変わりにくいので、見通しが立てやすくなることもプラスの要因となります。
――中間選挙から年末、2027年にかけて、米国経済は景気サイクルのどの局面に向かうでしょうか。
【山口】現在は、完全に「拡張期」に入っているとは言いがたく、まだ「回復期」と「拡張期」の間にあるとみています。
企業業績が底堅いことに加え、好調なセクターの裾野が広がっています。これまでは、AI需要の恩恵を直接受ける「情報技術」(XLK)にばかり資金が集まっていましたが、最近は、ほかのセクターにも資金が流れています。こうしたトレンドはしばらく続きそうです。
――過去の中間選挙前後の米国株式市場の動きには、どのような傾向がありましたか。
【山口】中間選挙は、下院全議員と上院3分の1の議員が改選されます。大統領選挙ほどのインパクトはありませんが、残る任期の2年間で大統領がどこまで政策を実行できるかに影響します。
現状の議会は、両院とも与党の共和党が過半数を占めています。しかし、伝統的に中間選挙では与党に厳しい結果となる傾向があります。下院では野党が、上院では与党が多数派となる「ねじれ議会」となることが多く、ステート・ストリートでも同様の見通しを立てています。
ねじれ議会だと政策が通りにくくなり、現状維持になりやすいのですが、これは市場にとって「不透明感がなくなり予測が立てやすくなる」面があります。このため、中間選挙前は市場の上値が重くなり、選挙後には投資の動きが活発化して市場が回復することが多いのです。
――今後の景気を判断するうえで、どんな指標に注目すればいいでしょうか。
【山口】見ておきたい指標は四つあります。一つ目は、雇用者数、失業率、賃金上昇率、求人件数などの「雇用」。二つ目は「インフレと金利」です。インフレが落ち着けば、家計の実質購買力が上がりますし、企業の資金調達環境も良くなります。ただ、トランプ政権では関税や原油価格の高騰、財政政策によるインフレ再加速の懸念があるので注意が必要です。三つ目は「個人消費」、四つ目が「企業業績」です。
ただし、これらの指標を一つひとつ確認するには、相応の手間と時間がかかります。ステート・ストリートでは毎月、セクターごとの重要な指標をレポートにまとめて「ステート・ストリート チャートパック」として公表しています。そこにマクロモニターも掲載されており、継続的に確認することで、主要指標の推移や変化を効率的に把握できるようになっています。
2026年これからの注目は「公益事業」と「ヘルスケア」
――前述の三つに加え、今後注目したいセクターはありますか。
【山口】「公益事業」(XLU)と「ヘルスケア」(XLV)です。
「公益事業」(XLU)については、ねじれ議会になると化石燃料に対する追加の規制緩和が進みにくくなりますが、その一方で、再生可能エネルギーや送電網、電力インフラ投資が相対的に重視される可能性があります。また、AIによる電力需要の増加は、どちらの政党も無視できませんから、政府の設備投資政策の恩恵を受けやすいでしょう。
医薬品や医療機器などの「ヘルスケア」(XLV)は、特に注目したいセクターです。今年の業績は、M&Aなどのコスト負担が大きく利益成長率はマイナスなのですが、来年は反転し、2ケタ成長が見込まれています。さらに、糖尿病治療薬などバイオ系医薬品のイノベーションも成長を後押ししています。景気動向の影響を比較的受けにくいため、景気減速局面への備えという点でも注目できます。
このセクターはここ数年、S&P500市場の伸びを下回っていたのですが、最近はかなりの資金流入があり、ステート・ストリートのセクターETFの中でも、運用資産残高(AUM)の伸びが「情報技術」(XLK)に次いで2番目に高くなっています。今回の決算で次期見通しの好調ぶりに注目が集まっているほか、利益成長が大型テックなど一部の企業やセクターから幅広い分野へと広がる局面で、「ヘルスケア」(XLV)にもその裾野が広がることが期待されています。また、AIとはあまり相関性がないため、やや過熱感のあった「情報技術」(XLK)などから動いた資金の受け皿になっているようです。
ほかにも、バリュエーション(株価に対する割高・割安感)を見て割安感があるものを今のうちに買っておくのはいいかもしれません。
――そのセクターが他と比べて割安かどうかは、どこで見ることができますか。
前述の「ステート・ストリート チャートパック」では、バリュエーションも表にして示しています。いつも低い価格で取引されているセクターは、他のセクターと比較したときの「相対的バリュエーション」で常に安いところに位置付けられる傾向があるので、同じセクターの過去の価格と比較して安いかどうかを評価した「絶対的バリュエーション」の方が、良い物差しになるでしょう。また、「今、安いか高いか」に加え、「価格変動の勢いがあるかどうか(モメンタム)」という点もポイントです。
出所:FactSet(2026年8月31日時点)。S&P500セクター指数に基づいて算出しています。相対的な向こう12カ月のPERは、各セクターのPERをS&P500指数のPERと比較したものです。
三つの分野から組み合わせて「選挙に強い」ポートフォリオをつくる
――中間選挙で、事前の市場予想とは異なる結果が出て市場が大きく動いた場合、個人投資家はどう対応すればよいでしょうか。
【山口】どちらかが両院で過半数を取り、ねじれ議会にならなかった場合は、政策の見通しが短期的に変わり、値動きが激しくなる可能性があります。
ただ、そこで慌てないことが肝要です。確認すべきポイントは三つあります。一つ目は、税制や規制、政府支出、中東政策などのうち、選挙結果によって実行可能性が変化するものは何か。二つ目は、こうした変化が、企業業績や資金調達環境にどう影響するか。業績への影響が小さければ、市場の反応は長続きしないでしょう。そして三つ目は、市場の反応が一時的かどうかです。短期的なセンチメント(市場心理)の変化なのか、中長期的なトレンド変化を反映したものかを確認します。
選挙前に予想を立て、そのシナリオに集中投資するのはリスクが高いのでお勧めできません。AIやデジタル化など、選挙を越えても続く可能性のある「長期成長テーマに関連するセクター」、資本財、金融、エネルギーなど、「政策の影響を受けやすいセクター」、ヘルスケア、生活必需品、公益事業など、景気の減速局面でも需要が比較的安定している「ディフェンシブセクター」の、三つの分野から組み合わせると、選挙結果に影響されにくいポートフォリオになるはずです。
中間選挙で重要なのは結果を当てることではなく、自身のポートフォリオの成長源泉とリスク要因を改めて点検する機会として活用することだと考えています。
ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント
ヴァイス プレジデント
セクター・セールス・スペシャリスト
投資で「資産形成」と「ビジネス感度のアップ」を両立する
――ここでも、第2回の記事で教えていただいた分散のコツが生きてくるわけですね。購入を検討するときは、どの商品を見るといいでしょうか?
【山口】ステート・ストリートのセレクト・セクターSPDR ETFシリーズは28年の歴史を持つETFで、運用残高は約4,000億米ドル超に上ります(2026年8月15日時点)。唯一、S&P500の11セクターすべてを網羅した公式ETFを揃えており、総経費率は業界最低水準の0.08%と、保有コストが低いのも特徴です。少額から始められますし、日本の主要なネット証券会社で購入が可能で、「外国株式」「米国株式」「海外ETF」などに分類されています。
インデックス投資のように長期保有を前提とするのではなく、チャートパックの指標を見ながら、3~6カ月ごとを目安に機動的に調整するといいでしょう。ステート・ストリートのセクターETFなら流動性が高く、売買コストが抑えられます。
セクター投資は、景気動向、AIなどの技術革新、選挙の動きや政策の変化が、それぞれのセクターに影響を与えていることを体感でき、ビジネス感度を高めることができます。さらに、自分の選択が適切であれば大きなリターンも期待できます。自分の資産形成になるだけでなく、世界を多面的に見る力もつくはずです。今年後期に向けた見通しを立ててみてはいかがでしょうか。
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ETFに係るリスク
ETFは、値動きのある有価証券等を主な投資対象としますので、連動対象である株価指数等の変動、組入有価証券等の価格の下落、組入有価証券の発行会社の倒産や財務状況等の悪化、その他の市場要因等の影響等により、市場取引価格または基準価額が値下がりし、それにより損失が生じることがあります。また組入有価証券は為替相場の影響を受けるものもあるため、為替の変動により基準価額が下落することがあります。したがって、投資家の皆様の投資元金が保証されているものではありません。
※ETFのリスクは上記に限定されません。
ETFに係る費用
市場を通してETFに投資する投資家の皆様には以下の費用をご負担いただきます
・売買手数料(お申込み時にご負担いただきます)
ETFの市場売買には、取扱い第一種金融商品取引業者(証券会社)が独自に定める売買委託手数料がかかり、約定金額とは別にご負担いただきます。(取扱会社毎に手数料率が異なりますので、その上限額を表示することができません。)
・保有時の費用
ETFの保有期間中は運用管理費用等を間接的にご負担いただきます。保有時の費用の率(総経費率)は個別のETF毎によって異なり、また運用状況や保有期間等に応じて異なることからその上限額を示すことはできません。
個別のETFの情報についてはウェブサイトの各ファンドページにてご確認いただけます。
ご注意事項
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ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第345号
加入協会:一般社団法人資産運用業協会、日本証券業協会
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