上場株式をセクター(業種、産業)に分類し、それぞれのセクターの複数の銘柄に投資する「セクター投資」は、個別株よりもリスク分散効果が高く、「インデックス投資の次の一手」として有力な選択肢だ。では、どのようにセクターを選べばいいのか。ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント(ステート・ストリート)のセクター・セールス・スペシャリストの山口美帆氏に聞いた。

景気の局面を見ながらセクターを選ぶ

――第1回の記事では、セクター投資がインデックス投資やテーマ型投資とどう違うか、よくわかりました。改めて、セクター選びの三つのポイントについて詳しく教えてください。

【山口】はい。S&P500は「世界産業分類基準(GICS)」に基づいて11のセクターに分類されており、それぞれのセクターごとに複数の銘柄へ投資する手法が、セクター投資です。

図1:11のセクター分類(セレクト・セクターSPDR ETFシリーズより)
※出所:ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント

セクター選びのポイントは三つあります。一つ目は、今の経済が「回復」「拡張」「減速」「後退」のどのサイクルにいるかという景気の局面。二つ目は、金利や原油価格などのマクロ指標。三つ目は、企業の業績や資金フローなどの全体トレンドです。これらは互いに関係していて、例えば景気の局面を判断するためにはマクロ指標や企業業績なども見て総合的に判断する必要があります。

――現在の景気の局面は、どのあたりでしょうか。また、それをもとに、どのようにセクターを選んだらいいのでしょうか。

【山口】現在の景気は、「回復期」か「拡張期」だとみています。多くのセクターで2ケタ成長を達成すると予想されていますし、AI関連投資も活発で、成長基調だと分析しています。

景気の局面によって選好されるセクターは異なり、今のような回復期や拡張期は、高い成長が期待できる積極的/景気敏感セクターが好まれます。一方、減速期や後退期は、先の見通しが立ちにくいため、景気に左右されにくい防御的/ディフェンシブセクターが選好されます。

図2:景気サイクルごとのセクター選好
※出所:Bloomberg Fianance L.P.をもとにステート・ストリート・インベストメント・マネジメント作成。2026年7月末時点。分散投資は利益を保証するものではなく、損失を防ぐものでもありません。また、インデックスそのものに投資することはできません。セクターは、対応するS&P セレクト・セクター指数で代表されています。

――景気局面以外の、マクロ指標、企業の業績や資金フローなどの全体トレンドはどのように見ればいいですか。

【山口】マクロ指標としては、金利の動向、原油価格の変動、インフレの度合いを示すCPI(消費者物価指数)、ISM(全米供給管理協会)製造業景況感指数などがあります。ステート・ストリートではこれらに加え、セクターごとの業績や資金フローなどの状況もレポートにまとめ、毎月「ステート・ストリート チャートパック」として公開しています。後ほど図3でも出てきますが、重要な指標が一覧になっており、セクターごとの動向もわかりやすく示してあるので参考になるでしょう。

さらに、月次の「米国株式セクター・スコアカード」では、11セクターについてバリュエーション(株価に対する割高・割安感)、業績や予想の変化、市場の投資状況などを短期、中期、長期で評価し、一覧にしています。もし「今は価格が高すぎるのでは」と思ったとしても、成長する見通しが高ければ、株価の割に「割安」だと判断できます。売買のタイミングを計るのにも役立つと思います。

すべての指標を追うのは大変なので、「勤務先の業績に影響するので原油価格が気になる」「景気の局面に着目した投資がしたい」など、自分の関心等に合わせて重点を置くポイントを決めてもいいでしょう。ただ、一つに絞るのはリスクが高いので、繰り返しになりますが複数を組み合わせることをお勧めします。

後期の注目は「情報技術」「資本財」「金融」

――2026年後期に注目されそうなセクターには、どんなものがありますか。

【山口】まず注目しているのは「情報技術」(XLK)です。業績も好調ですし、AI需要は継続するとみられ、引き続き最も強い「強気」の評価をしています。データセンターの建設や電力の設備投資など、AIのインフラ面の需要で活況を呈している「資本財」(XLI)も、引き続き「ポジティブ」の評価です。

「金融」(XLF)は、「中立」から格上げして「ポジティブ」としました。IPOやM&Aが活発化しており、景気回復の恩恵を受けるセクターであることに加え、企業や個人向け融資の増加が期待されることや、金融機関の事業を後押しする規制緩和への期待が背景にあります。

また今回は、やや異例ともいえますが、「ヘルスケア」(XLV)も格上げしました。景気に左右されにくいセクターですが、セクター全体の業績や株価に回復傾向が見られるため「ポジティブ」の評価にしています。

一方、「一般消費財」(XLY)と「生活必需品」(XLP)は、消費支出の弱さなどの逆風もあり、「ネガティブ」の評価にしています。

※各セクター名の後ろのかっこ内は、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメントが提供する各対象ETFのティッカーです。

図3:2026年第3四半期のセクター市場見通しの概要
※出所:ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント、2026年6月26日現在。緑色の網掛けはポジティブな見方、オレンジ色の網掛けはネガティブな見方を示しています。

セクター選びのコツは、3グループに分けて分散を図ること

――分散を図るためにも、複数のセクターに投資したほうがよいのでしょうか。一つのセクターには複数の銘柄が組み入れられているので、それだけで分散されていると考えると、どこまで分散すべきか迷います。

【山口】それぞれのセクターがどれくらいS&P500と相関しているかを考えながら分散するといいでしょう。具体的には、三つのグループに分けるとわかりやすいと思います。

冷蔵庫の中身に例えると、“水や米など、常に持っておきたい食材”が、S&P500とは異なる動きをする防御的/ディフェンシブセクターです。一方、“普段よく使うので頻繁に入れ替える野菜、肉など”は、S&P500と似た動きをする景気敏感(シクリカル)セクターが該当します。ただ、その中でも「情報技術」(XLK)、「コミュニケーション・サービス」(XLC)は、価格が変動しやすいので、“たまに購入するけれど常に必要ではない高級食材”のような扱いです。

「常備食材はこれ、季節で入れ替える食材はこれ、こういう状態になったときだけ購入するのはこれ」と、イメージしながら組み合わせ、様子を見ながら好調なものを少しずつ増やしたり、入れ替えたりするといいでしょう。

――どれくらいの期間で見直しや入れ替えをするといいでしょうか。

【山口】個別株ほど価格が激しく上下しないので、普段は月次で数字を見て、当初の自分の目論見と合っているか「答え合わせ」をするくらいでいいと思います。

入れ替えは、3~6カ月くらいを目安にしてはいかがでしょうか。価格が下がるとドキドキするかもしれませんが、中長期的に上がる見通しを持っているならば、ぐっと我慢することも大切です。あらかじめ「ここまで下がったら売る」という目安を持っておくのもいいでしょう。

各セクターに組み込まれている銘柄数を把握しておくことも大切です。例えば、「資本財」(XLI)は81銘柄、「金融」(XLF)は76銘柄が組み込まれている一方、「コミュニケーション・サービス」(XLC)は23銘柄です(いずれも2026年7月20日現在)。銘柄数が少ないと、1社の価格の上下がセクター全体に影響して変動しやすい傾向があります。銘柄数が多いセクターは、多少価格が下がっても待てば戻る可能性があるので、あわてないことが肝要です。

山口美帆(やまぐち・みほ) ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント ヴァイス プレジデント セクター・セールス・スペシャリスト
山口美帆(やまぐち・みほ)
ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント
ヴァイス プレジデント
セクター・セールス・スペシャリスト

低コストで選びやすい「セクターETF」

――セクター投資の方法としては、ETFのほかにも投資信託やアクティブファンドなどがありますが、その中でETFを選ぶメリットはどんなところにありますか。

【山口】投資信託と比べると、リアルタイムで価格を見て取引ができることや、コストの低さ、透明性の高さが大きな特徴です。

なかでも、ステート・ストリートのセレクト・セクターSPDR ETFシリーズは、1998年に設定された歴史あるETFで、運用残高は約3,850億米ドルに上ります(2026年7月28日時点)。流動性が高いので、売値と買値の差(スプレッド)が狭く、売買コストが抑えられます。保有コストも低く、総経費率は業界最低水準の0.08%です。

また、それぞれのセクターがどのような銘柄で構成されているか、すべて開示されていますから、銘柄を見ながら選ぶことができます。これは、アクティブファンドにはない特徴です。

冒頭の図1の通り、S&P500の11セクターすべてを網羅した公式ETFを揃えているのはステート・ストリートだけです。S&P500という同じベンチマークで比較できるので、特徴もつかみやすく、選びやすさにもつながっています。さらに、業界でも珍しいセクター専門のリサーチチームを持つことも強みです。このチームが、セクター選びに役立つ分析レポートをタイムリーに提供しています。

――セクター投資の魅力は、どんなところにありますか。

【山口】1点目は、市場の動きをより深く理解できるようになることです。

例えば、S&P500といったインデックスファンドは、今や約4割を情報技術系企業の銘柄が占めています。自分が意識しないままに、いつの間にか情報技術セクターに偏った投資になっている可能性があるのです。

しかしセクター投資の場合は、どの産業が成長しているか、どの産業が今後逆風を受けるか理解しながら購入できます。例えば、AIの進展で影響を受けるのは情報技術セクターだけではなく、資本財、公益事業、素材などのセクターも恩恵を受けることがわかります。市場に対する理解度が深まり、ビジネス感度も上がるでしょう。

2点目は、個別株よりも選びやすく、分散効果がありながらも、インデックス投資よりも価格変動があるので利益を追求できることが挙げられます。特に最近は、セクター間のリターンのばらつきが大きいため、セクター選びの重要性が高まっており、適切な選択をすれば大きなリターンが期待できます。インデックス投資から一歩踏み出したい人にとっては、セクター投資を始めるにはぴったりのタイミングといえるでしょう。

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※ETFのリスクは上記に限定されません。

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