「キャリアを手放さない」方法を探す

3名の皆さんのお話は、決して他人事ではありません。そこで、私が考える「更年期を乗り越えるためのポイント」をいくつかお伝えしたいと思います。

まず一番大切なのは、「キャリアを手放さない」ことです。現在はヨガインストラクターとして働いている山口さんは、大手メーカーを退職したことで年収が半分以下になりました。持ち家があったことで決断できたということですが、そんな資産がない方も多いですし、老後を考えれば不安もあります。まずは勤務先に相談をし、一時的に休職したとしても、細く長く働き続けられる環境を整えられるとベストでしょう。

ただ、「更年期休暇」を取り入れている企業は1割にも満たないとされており、「言い出しにくい」という方が大半だと思います。実際、山口さんも社内に相談できず、無理をして頑張り続けた結果、症状を悪化させてしまいました。

しかし、ひとりの訴えがきっかけとなり、誰もが働きやすい環境が整備される可能性もありますし、逆にまったく理解のない会社だった場合には、働くペースを落としながら転職先を探すことも、長く働き続けるための選択肢になるでしょう。

厚生労働省では、更年期といったさまざまな心身不調に対応した「特別な休暇制度」の創設を促すために、「働き方・休み方改善ポータルサイト」で情報発信をしていますので、社会の変化にも期待したいですね。

オフィスで働く日本人女性
写真=iStock.com/lielos
※写真はイメージです

マネープランを立てて静養する

そもそも、不調を抱える中で大きな決断をすること自体が、リスクになり得ます。心身が弱っているときは判断力が鈍りがちなので、更年期障害をはじめとした心身の不調を感じている皆さんにお伝えしているアドバイスとしては、「いくらまでなら取り崩せる」といった一年先くらいまでのマネープランを立て、その中でゆっくり静養しながら働き方を考えましょう、ということです。

「休み中に株をはじめるのはどうですか」という方もいますが、まず資金がそれなりにないと難しいということと、判断力が低下している中でハイリスクな投資に手を出すことはおすすめできません。知り合いにも、うつ病で休業中にビットコインに手を出し、余計に症状を悪化させてしまった方がいます。「働くことが難しい局面では、お金を大きく増やすことも難しい」と割り切り、慣れない資産形成を突然はじめるのではなく、十分な額ではなくとも、傷病手当金などをもらってじっくり立て直しをはかるほうが安全かと思います。

一方で、きたる更年期に備えて、国債やNISA制度を活用して投資信託で投資するなど、比較的安定的にお金を増やせる可能性がある投資をはじめておくのはおすすめです。急な体調不良で働けなくなったときの、心の余裕につながるかもしれません。

今回は女性のケースをお伝えしましたが、男性にも更年期があります。長い目で見て、何が起きても落ち着いて対応できるマネープランと環境づくりを心がける。ひいてはそれが、自分らしく生き続けることにもつながってくるのではないでしょうか。

構成=小泉なつみ

高山 一恵(たかやま・かずえ)
Money&You 取締役/ファイナンシャルプランナー(CFPR)、1級FP技能士

慶應義塾大学卒業。2005年に女性向けFPオフィス、エフピーウーマンを設立。10年間取締役を務めたのち、現職へ。全国で講演・執筆活動・相談業務を行い女性の人生に不可欠なお金の知識を伝えている。著書は『はじめての新NISA&iDeCo』(成美堂出版)、『定年前後のお金の強化書』(きんざい)など多数。FP Cafe運営者。