喫煙者に多い小細胞肺がん

肺がんは、「小細胞肺がん」と「非小細胞肺がん」の二つに分けられます。生検の結果、僕のがんはステージⅡBの「小細胞肺がん」であることが判明しました。喫煙者に多いがんで、60年以上タバコを吸ってきた身としては「無理もねえな」という気持ちです。一般的には進行が早く、再発の可能性も高い“タチの悪いがん”として知られています。まずは抗がん剤による治療を始めましたが、当初、中川くんは僕が抗がん剤を拒否するのではないかと考えていたようです。以前、彼との共著の中で僕が「化学療法、つまり抗がん剤も、ストレスが強ければやらないと思います」と述べていたからです。

しかし一度、医療制度の流れに乗ったら後は身を任せておくべきです。治療を受けるにあたっては造影剤の使用ひとつとっても、いちいち書類にサインをしなければなりません。最終的にはなんだかよくわからないことも多いのですが、かつてのように「お医者さんにお任せします」は禁止されている。一応、患者の自己判断ということになっているのです。

抗がん剤の投与は1回につき3日間かかります。幸い吐き気などといった副作用が全く出なかった。理由を聞くと、点滴に吐き気止めを入れていると言うので「抗がん剤による吐き気がどういうものかを知りたいから、薬を抜いてくれ」と言ったくらいです(笑)。抗がん剤の投与を計4回行った後、秋頃からは3週間にわたる放射線治療に移りました。その結果、年末には肩の痛みも消え、CTに写っていた影も消えていました。

(養老 孟司/文藝春秋 2026年9月号)
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