麻生内閣では養子案が挫折

養子案については、平成時代の麻生太郎内閣当時に水面下で制度化への動きが進んでいた。それを、上皇陛下のお考えを体した当時の漆間巌内閣官房副長官(事務担当)が阻止した、という顚末があった(平成21年[2009年])。

秋篠宮殿下は、その年のお誕生日に際しての記者会見で、少し意外な発言をされていた。

「国費負担という点から見ますと、皇族の数が少ないというのは、私は決して悪いことではないというふうに思います」と。

当時、このご発言のご真意を測りかねた人も少なくなかった。だが、旧宮家系の子孫は男系の血筋では「赤の他人」であり、しかも世代の交代も進んでいる。そんな民間男性を無理やり養子にしても、皇室の大切な精神や高貴な気風を将来に受け継ぐ上で、深刻な危惧がある。

だから、養子制度を採用する不適切な皇室典範の改正に踏み込むぐらいなら、むしろ「皇族の数が少ないというのは……決して悪いことではない」とのお考えを述べられたものだろう。

「天皇家の歩みを否定するもの」

養子案が初めて浮上した当時、「上皇陛下は『なぜ、そのような議論になるのか』と困惑しておられた」という(『文藝春秋』前掲)。

さらに、養子制度をめぐる皇室の方々や周辺の反応について、次のような報道もある。

「元(宮内庁)参与が語る。『上皇さまは、常に国民に寄り添い、相互に理解しあう関係があってこそ、象徴天皇の地位に立てるという信念をお持ちだった。戦後80年近く一般国民だったのに、男系男子の血筋を理由に旧宮家出身者を皇族にする養子制度は、敗戦や大震災の苦難を国民と共に乗り越えてきた天皇家の歩みを否定するものだ』」(「読売新聞」前掲)
「高市政権下で旧宮家からの養子案が『第一優先』として急浮上すると、皇室の方々からは戸惑いの声も聞かれた」(「朝日新聞」7月18日付)

秋篠宮さまの“ダメ出し”

こうした構図の中で秋篠宮殿下のご発言をどう捉えるか。

天皇陛下のご発言は、改正前に釘を刺す=「牽制」的なメッセージだった。しかし改正後の世論調査では、「国民の理解」が得られていないことが明らかだ。

毎日新聞(7月18、19日)
改正皇室典範「評価する」19%
「評価しない」45%
養子制度「賛成」25%
「反対」40%
読売新聞(7月24~26日)
養子制度「評価する」40%
「評価しない」45%
共同通信(7月25、26日)
改正皇室典範「理解を得られる」44.3%
「得られない」49.6%

こうした結果を踏まえると、秋篠宮殿下が改正後に、「国民の理解」を求められた天皇陛下のおことばに対して「もっとも」「その通りだ」と賛同されることは、ほとんど“ダメ出し”に等しい。