お口の問題を抱える子供が急増している
「うちの子は食べるのが遅くて」と笑うのは、今春、中学2年生になった男子の母親です。数年ぶりの診察で診た彼は、すっかり体が大きくなり、運動部の活動に励んでいます。
「でも、食べ方はまだまだ子供なの。ハンバーガーの食べ方も下手くそなんです」と母親。前歯でハンバーグを噛み切れずに、パテとレタスを引きちぎるように食べるので、いつもハンバーガーが崩れてしまうそうです。
実は2010年以降、中学生になってもハンバーガーを前歯で噛み切れない、など、咀嚼をはじめ口の機能に問題を抱える子供が急増しています。原因は決して行儀の悪さや歯並びのせいではなく、2018年に疾患に指定された「口腔機能発達不全症」です。
幼児期から“サイン”は出ている
「口腔機能発達不全症」は単なる筋肉の未発達状態をさしているのではありません。本来、乳幼児期に獲得する「食べる」「話す」「呼吸する」などの口腔機能が、何らかの理由で未熟なままに成長した状態です。
突然症状が現れるわけではなく、成長段階でさまざまな前兆があります。
幼児期に特に見逃しがちなシチュエーションが「風船を膨らませられない」です。頬をパンパンに膨らませるものの、空気を注入できずに、一向に風船が膨らませられない状態で、これは口の周りの筋肉(口輪筋)の筋力低下と、舌のコントロール不全の明確なサインです。
その他にも以下のような兆候があります。
・いつも口がポカンと開いている(口呼吸の常態化)
・食事中に何度も水を飲む(咀嚼が不十分なため、水で流し込んでいる)
・滑舌が悪く、特に「サ行」や「タ行」が聞き取りにくい
・食べる時にクチャクチャと音を立てる
・硬い食べ物を極端に嫌い、柔らかいものばかり選ぶ
また、ストローでジュースを飲むのが苦手、寝言が大き過ぎるなどがあります。
口呼吸となり、鼻の穴が広がってしまったために、鼻ほじりの指が2本同時に入ったりするのも危険サインです。
こうした姿を見て、多くの親御さんは「食べ方が汚い」「しつけがなっていない」「幼い」などと、性格やマナーの問題と片付けがちです。しかし、これらは体からのSOS。「うちの子はまだ小さいから」と先延ばしにするのは致命的です。
なぜなら、口腔機能の発達には明確な「ゴールデンタイム」があるからです。
まず、上顎の成長は10歳までで成人の90%まで完成します。さらに下顎の骨のフォルム形成機能(リモデリング)は、12歳以降になると3分の1に低下します。そして14歳を超えると、骨の形と質が固定され始めます。そこを見逃すと、後からの修正(治療)には多大な費用と時間を要します。



