現役でいる期間が長期化し安定した活躍が求められる
内閣府「令和7年版 高齢社会白書」(2025年6月)によると、日本の総人口に占める高齢者(65歳以上)の割合は29.3%。国立社会保障・人口問題研究所の将来推計人口によれば、70年には高齢化率が38.7%に達し、「2.6人に1人が65歳以上」になると予測されている。この不可避な人口動態の影響はマクロ経済上の課題にとどまらず、個人のキャリアデザインや人生設計に対しても意識の変革を迫る。平均寿命の長さそのものではなく、心身共に自立して日常生活を制限なく送ることができる期間「健康寿命」にどうアプローチしていくかが、一人一人の幸福と社会の活力を左右するコアファクターとなる。
22年時点における日本の健康寿命は男性が72.57年、女性が75.45年。平均寿命は男性が81.05年、女性が87.09年で、それぞれ約8.5年、約11.6年の差がある。雇用の延長、シニア層の起業や就労拡大が進む今、「現役」として社会の第一線にとどまる期間は確実に長期化し、60代、70代も安定したパフォーマンスを発揮することが期待されている。しかし、もし健康上の制約があれば個人のQOLを低下させるだけでなく、それまでに蓄積してきた豊かな経験や専門的な知識などを還元する機会が奪われ、社会的な損失にもなりかねない。
実態とはかけ離れている「自分は大丈夫」という感覚
健康寿命を損なう要因はどのようにして形成されるのだろうか。さまざまなミッションと向き合う働き盛りの世代は、「もっとやれるはず」と自身を鼓舞して日々を乗り切っている人も多いだろう。ただ、そこには「ギャップ」があるかもしれない。
厚生労働省「2019年 国民生活基礎調査の概況」(20年7月)によると、自身の健康状態について「よい」「まあよい」「ふつう」と回答した人(6歳以上)の割合は8割以上に上る。「自分は健康である」という認識を多くの人が持っているが、定期健康診断において、何らかの検査項目で基準値を外れた「有所見率」は年々上昇。厚生労働省「令和6年定期健康診断実施結果(年次別)」(25年9月)では59.4%に達していることから、「自分は大丈夫」という感覚が必ずしも「健康であることの証明」にならないことが分かるだろう。検査項目別の内訳を見ると、血中脂質が31.2%と最も高く、次いで血圧(18.4%)、肝機能検査(16.2%)、血糖検査(13.1%)など、いわゆる生活習慣病を構成する主要なリスク因子が上位を占めている。これらは自覚症状として現れにくく、時間をかけてダメージを蓄積していく。つまり「調子が良い時」にこそ、客観的な指標を用いて「自身の健康のポートフォリオ」を把握しておくことが、「人生100年時代」にふさわしいリスク管理の一つだといえる。
ビジネスにデータが欠かせないように、健康への投資もまた、流行や直感で「健康に良さそうなこと」に手を出せばリターンが得られるわけではない。長期的な視点から、信頼性の高いデータに基づき個々に応じた適切な管理を行っていくことが重要だ。
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