経営層の健康状態は個人のパフォーマンスを左右するだけでなく、組織にも大きな影響を与え得る。健康管理は重要なリスクマネジメントであり、より良い未来に不可欠な投資だ。では、自身に適した健康管理とは? その答えを提示してくれるのが、6月30日、東京・八重洲に開設した「日本医科大学 八重洲健診ステーション」である。所長の吉田寛氏は「検査の結果を病気のリスク低減につなげ、未来の健康をつくるための施設です」と強調する。

「治すための医療」から「ならないための医療」へ

――健診ステーション開設の背景や、コンセプトについて教えてください。

【吉田】これまでのような「病気を治すための医療」だけでなく、これからは「病気のリスクを低減するための医療」がより重視され、発展していくと考えています。特に、多忙な経営層のパフォーマンスを将来にわたって支えていくのは健康です。検査をして、単に結果を伝えて終わるのではなく、得たデータを未来のためにどう生かしていくか。そんな視点に立った健診を通じて皆さんの人生に伴走するのが、八重洲健診ステーションの役割です。東京駅に直結した立地のため日本全国からアクセスしやすく、また、海外から日本にお越しになる方々のご利用も想定しています。

吉田 寛(よしだ・ひろし)氏
吉田 寛(よしだ・ひろし)
日本医科大学
八重洲健診ステーション 所長
学校法人日本医科大学 業務執行理事
1986年日本医科大学卒業。同大学外科講師、准教授、日本医科大学多摩永山病院院長、日本医科大学消化器外科大学院教授、付属病院副院長などを経て、2026年より現職。専門分野は消化器外科一般、肝胆膵など。

――どのような特徴がありますか。

【吉田】消化器、循環器、呼吸器、遺伝子、画像診断など、各分野の最前線にいる教授クラスの医師が健診に関わっていることです。例えば乳がん検査では、乳腺科の教授室に専用の読影機を設置するなど、受診者の情報をスムーズに共有できるシステムを構築しています。また、前立腺がんの腫瘍マーカーであるPSAの数値に不安がある方を対象に、泌尿器科の教授による定期的な面談も実施します。「異常があるか・ないか」の確認が目的になりがちな健診において、本来、重要なのは「その結果をどう解釈するか」ということです。軽度の異常が認められた場合に、経過観察でいいのか、それとも重大な病気につながるかもしれないサインなのか。現在は基準値の範囲内に収まっていたとしても、一人一人の体質や生活環境に応じて、将来的なリスクの予測も多様化していきます。当健診ステーションの最大の強みは、「病気になった方にどんな予兆があったか」を熟知する医師たちが、豊富な知識や診療経験を健診に還元し、「個別の未来を見据えた評価」を行うことにあります。さらに、各専門分野の連携により、多角的な視点からの評価も可能です。

健診メニューの一例

同じ年齢でも老化の進み方に違いがあるのはなぜか?

――世界的にも注目されている「Precision Health(精密健康医療)」の考え方を導入されています。

【吉田】「Precision Health」とは、遺伝情報や生活習慣などのデータを統合し、病気が発症する前から個人のリスクを可視化して管理する、新しい予防医療のアプローチです。同じ「50歳」であっても、体の中の老化の進み具合には大きな個人差があります。その差を生じさせる背景には、「メチル化」と呼ばれる遺伝子の調節機能があります。一般的な成人男性の細胞はおよそ37兆個ともいわれ、細胞内の遺伝子には「オン・オフのスイッチ」があります。メチル化は遺伝子のスイッチの切り替えに関係しており、健康な状態であれば適切なパターンで働きますが、加齢、喫煙、肥満、食生活などの影響で少しずつ「ズレ」が蓄積してしまいます。ズレの蓄積速度は人によってかなりの開きがあり、これが人によって老化の進み方や病気のなりやすさに違いが出る理由の一つです。通常の検査では見つけにくく、数値には表れなくても、実は遺伝子レベルで病気になりやすい土壌が形成されている可能性があるということです。

――その見えにくいリスクの発見に貢献するのが、さまざまな先進的な検査というわけですね。

【吉田】米国を中心に導入が進んでいる「MCED(Multi-Cancer Early Detection)」は、一度の採血で複数のがんリスクを同時に評価することができる検査です。がん検診の多くは、胃、肺、大腸など部位を分けて行われています。ただ、検査でカバーできるがんは、全体の一部に過ぎません。MCEDを用いて血液中の微量なDNA情報を解析することで、全身を包括的に評価できる可能性があります。臓器別の健診から「全身をまとめて評価する健診」への、大きな転換点になると考えています。また、がんや糖尿病、動脈硬化、免疫機能、さらには認知症との関連が注目されている「腸内細菌」の検査にも力を入れています。

日本医科大学 八重洲健診ステーション

「先回り」して対策を立て行動変容を支援していく

――改めて、どのような価値を提供していくのか、お聞かせください。

【吉田】どんなリスクがあるのかが把握できていれば、私たちは「先回り」して対策を立て、「健診は年に1回ではなく2回にしましょう」などと、その人に最適化された個別の予防戦略をご提案できます。大切なのは、自分の現在の状態や将来のリスクを正しく知り、そのリスクを減らしていくことだと思います。専門的な検査や治療が必要と判断された場合には、日本医科大学付属病院の各診療科へ迅速につなぐなど、まさに大学病院の総力を結集した体制を整えています。未来の健康へと一緒に歩むパートナーとして、この健診ステーションをご活用いただきたいと思います。

6月30日オープン
日本医科大学 八重洲健診ステーション

Tel. 0120-489900
東京都中央区八重洲1-6-1
TOFROM YAESU TOWER 6・7階
――予約受付時間――
10:00~16:00(土・日・祝日を除く)

日本医科大学 八重洲健診ステーション外観

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