乳幼児期に限った現象ではない

朝以外にKがおっぱいを触りたがるのは、夕方だ。

Kは9時から17時まで保育園で過ごす。母の帰宅は18時30分頃。それからしばらくおっぱいを触りながら牛乳を飲む。保育園で友だちや先生に気を遣った反動で、安堵する時間を求めているのかと推測していた。そんな私の説明に遠藤先生は頷いた。

「保育園では楽しんでいるように見えても、ストレスがかかっているのかもしれません。だとしたら、お子さんはお母さんのおっぱいを触ることで、自分自身の感情を立て直したり、切り替えたりしているのかもしれませんね」

Kがおっぱいを触ろうとする行為は、単なるルーティンやスキンシップだけではないのかもしれない。

紹介したいのが遠藤先生の著書『安心感が子どもの心を育む』の次の一節だ。

〈アタッチメントは乳幼児期に限った現象ではありません。私たち大人も、困難に直面したときに信頼できる他者を求め、その支えによって心の安定を取り戻すことがあります。つまりアタッチメントは、人生を通じて私たちの心の健康を支える重要な機能なのです〉
頭を抱えるビジネスマン
写真=iStock.com/kuppa_rock
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愚痴がたまっている私も同じだった

私にも身に覚えがあり、深く共感した。

遠藤利彦『安心感が子どもの心を育む』(小学館)
遠藤利彦『安心感が子どもの心を育む』(小学館)

Kが言うことを聞かずに、イライラする日も少なくない。仕事やプライベートで、たびたびトラブルに直面し、落ち込んだり、怒ったりしている。そんなときは、誰かに愚痴を聞いてもらって憂さを晴らしたくなる。遠藤先生は言う。

「人は誰しも不安なときに、信頼する人と一緒にいたい、話を聞いてもらいたい、という気持ちが湧き出てきます。信頼する誰かと一緒にいて、話すなかで、私たちは少しずつ崩れた感情を立て直し『また明日がんばろう』と前向きになれる。そうして日常生活を健全に送っています。私たち大人も、信頼する人とのかかわりのなかで、感情を調整しながら、安心感を維持しているのです」

アタッチメントを必要としているのは、Kや乳幼児だけではない。

父親の私自身もまた、いや、多くの人が、アタッチメントによって、乱れがちな感情を無意識にコントロールしているのかもしれない。