老後は健康が一番大切
75歳まで働こう
僕がファイナンシャルプランナーの資格をとったのは52歳のとき。それからは、「心と体と財布の健康」をメインテーマに仕事のフィールドを広げてきました。
そして60代になった今、大きな関心を持っているテーマは老後と相続です。これらには「心と体と財布」すべての問題が関わってくるんですね。一般に定年退職した後は、それまでの蓄えと年金で暮らす方も多いですが、僕の場合は幸いまだ現役で、キャッシュフローもあるわけです。それで、これまでストックが少なかった分を殖やしていくこともできるんですね。
50代は教育資金と親の介護費用が両方必要になる年代です。だから、なかなかお金を貯められない。さらに年金にも多くを期待できない。となると、定年後もキャッシュフローが続くことが非常に大切になります。
僕はいつも「75歳まで働こう」とお話ししているんですよ。そのためには、精神のバランスと体の健康をキープすることがとても重要だと思うんですね。そんな老後への準備を僕は「老活」と呼んでいます。
そして、その締めくくりが「相続」ということです。
50代になったら
相続の準備を始めたい
今年の税制改正で、2015年から相続税が増税になることが決まりました。相続税を払う人は4倍以上に増えるともいわれています。相続税は他人事ではなくなってしまうんですね。
問題は相続税だけではありません。僕らぐらいの世代って、相続に直面するタイミングにあるんですが、周囲を見ていても、親がきちんとしていないと兄弟間のもめごとがすさまじいんです。お金があるところはあるところでもめるし、なければないで、やはりもめてしまう。
日本人って死に対する嫌悪感が強いですから、死ぬことを考えるだけでも運が逃げるんじゃないか、と考えてしまいがちです。でも、相続を考えるっていうことは、家族について考えることだし、それぞれの生き方、暮らし方を考えることなんです。
僕も、息子たちには投資先や預金のことを、ある程度は伝えています。働いた割には、驚くほど少ないですが(笑)。また、会計事務所の先生や弁護士を含めて、周囲にもある程度オープンに話してあります。まだ実現していませんが、遺言も早めに書いておくつもりです。
こうしたことを考えるようになったのは、やはり東日本大震災以降ですね。突然亡くなった方もたくさんいらっしゃいますし。妹夫婦もそうだったんですが……僕は宮城県気仙沼市の出身なので。突然何が起きるかわからない、と実感しました。相続の準備をきちんとしておくことで、逆にこれからの生き方も充実してくるよ、と先輩たちにも教わったんです。
息子たちへの贈与は毎年実行しています。年に110万円までの贈与は贈与税が非課税になるんですが、これをちょっと多めにしています。例えば1人に120万円ずつ贈与して、110万円を超えた10万円についてはキチンと納税するんです。こうしておけば、税務署に確実に贈与だと認められるはずですね。
もちろん「子孫に美田を残さず」という考え方はありますが、息子たちは2人とも役者という道を選んだので、経済的には大変です。それで、イザというとき、「これだけオヤジがやっておいてくれたんだ」と分かってくれればいいと思っているんですよ。
相続について具体的に考えるのは60歳からでいいと思いますが、こうした生前贈与は早めに始めておくといいですね。将来どうするかの方向性については、50代のうちから少しずつ考えておいたほうがいいと思います。