社会の在り方が変化する今、これから高齢期に入る人を含め、シニア層はどんな考えや思いを持っているのだろうか――。NTTデータ経営研究所は2024年、次世代シニアのニーズの調査と次世代シニアの介護に関する意識調査を行っている(※)。次世代シニアのニーズや意識などを知ることは、充実した将来を目指す現役世代にも参考になるはずだ。そこで今回、同社の米澤麻子氏に調査から見えてきたことを聞いた。

※「人生100年時代における次世代シニアのニーズ調査」(2024年4月発表)と「人生100年時代における次世代シニアの介護に関する意識調査」(2024年5月発表)。いずれも日本国内の50~80代の男女2000人が調査対象。

“自己決定”が一つのキーワードに

――調査を通じ、次世代シニアのどのような特徴、傾向が見えてきましたか。

米澤麻子(よねざわ・あさこ)
米澤麻子(よねざわ・あさこ)
株式会社NTTデータ経営研究所
ライフ・バリュー・クリエイションユニット
グループ長
マネージングディレクター
大手保険会社においてヘルスケア領域の事業開発に携わる。NTTデータ経営研究所に入社後は医療・保健・福祉分野のコンサルティング・調査などに取り組む。

【米澤】介護に関する意識調査では、“家族や子供に負担をかけたくない”“自分でできることはなるべく自分で”という考えの人が多いことがはっきりしました。自分に介護が必要になったときは、公共のサービスや民間のサービスを最大限利用したいという人が多く、「できるだけサービスを使わず家族や身内で完結したい」という人は17.6%。住まいを変えることについても多くは前向きですが、「家族・親族との同居」と回答した人は16.1%にとどまりました。シニアをサポートする環境やサービス、技術が整備され、選択肢が増える中で、多くの人が“自己決定”の意識を強めていると感じます。

――どんなサービスを受け、どう生きるかを自分で決めたい人が多い。

【米澤】そうです。調査では「ケアプランの作成」についても尋ねており、「すべて自分で作成したい」「専門家と相談して自分で作成したい」との回答を合わせると過半数でした(図表1参照)。これについてはケアマネジャーなどから「自ら関与したいと考えている人がこんなに多いとは」と驚きの声も聞かれました。

【図表1】自分でケアプランを作成してみたいと思いますか

ご存じのとおり、介護の業界は今、深刻な人手不足です。その中でサポートする側が「全てを支える」のではなく、「必要な部分を支えていく」という形になれば、さまざまな負担は軽減され、介護の在り方も変わっていくはず。そうした意味でもシニアの気持ちを理解することは重要だと感じます。

新たなことに取り組む“きっかけ”を求めている

――シニアのニーズに関する調査では、「できるかどうかに関わらず、今後新たに始めたいこと」が尋ねられ、運動・スポーツやアウトドア系趣味、散歩をはじめ、47.8%がなんらかのことを始めたいと回答しています。

【米澤】調査では「今後の人生で心配すること」も尋ねていますが、「健康」の割合が高い結果となりました。健康は次世代シニアの重大な関心事ですから、順当な結果といえます。

――一方で何か始める際、心理的不安や健康上の問題、場所・機会や仲間の不在などが障壁になっていることが分かりました(図表2参照)。

【図表2】(新しいことを)行いたいができない理由は何か

【米澤】多くの人が新たなことに取り組む“きっかけ”を求めていると感じます。自治体も健康体操やフレイル予防などの普及啓発活動を行っていますが、始めるに当たっての不安を解消する情報発信を意識し、その情報へのアクセスをスムーズにすることで、参加者はいっそう増えるはずです。民間事業者も、どのように情報を発信し、いかに対象者を後押しするか。この辺りが「何か始めたいけど、始められない」という人に対してサービスを普及、浸透させる鍵になると思われます。

――新しいことを始めるに当たって、金銭的負担を心配する人も多いです。

【米澤】当然ながら「お金」は安心、充実のシニアライフを支える大事な要素です。そのためかと思いますが、65歳を超えても働きたい50代が約半数に上っていました。自身にとっての幸せとお金の関係に目を向けることが大切で、資産の額を人と比べても意味がありません。現在、資産の管理や形成を支えるサービス、商品が多く登場しています。これらも、自分やパートナーの人生を幸せにするものかどうかということを基準に考えることが大切だと感じています。

人との関わり方への考えもそれぞれ異なる

――「人との関わり」も充実したシニアライフを支える要素の一つになるかと思います。

【米澤】調査では「人との関わりに期待すること」も質問しており、「日常的に話をする相手がいる」(50.0%)、「困ったときに支え合える」(43.6%)が上位となりました。一方で「あまり人と関わりたくない」という人も一定数おり、特に50代では31.4%に上っています。50代は仕事上の人間関係がすでにあるためとも考えられますが、次世代シニアにおいては人との濃密なコミュニケーションを求めない人が増えてくる可能性も否定できません。今後、自治体や企業が支援の在り方を考えたり、シニア向けの商品・サービスを開発したりする際、そうしたことも念頭に置く必要があると感じます。

――最後に今後シニアライフを迎える現役世代にメッセージをお願いします。

【米澤】調査結果を受け、私は大きく次のような次世代シニアのタイプをイメージしました。「自立や自己決定を重視するタイプ」「好奇心旺盛で人付き合いが好きなタイプ」「マイペースで物事を進めていくタイプ」。細かく見ればもっと多様なタイプがあるでしょうが、要はそれぞれ価値観が異なるということです。「社会参加が健康寿命の延伸につながる」という研究があり、実際それを実感している人も多いでしょう。しかし義務感から社会参加をしても、それはプラスに働かないはず。アクティブシニアという言葉は、元気に外で活動している人のことだけを意味しているわけではありません。自身の生き方や人生観を大切にすることが前向きなシニアライフにつながるのではないでしょうか。

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