※本稿は、藪下遊『スクールカウンセラーは何を見ているのか』(ちくまプリマー新書)の一部を再編集したものです。
学校という社会に入っていく
小学校の6〜12歳くらいまでを「学童期」と呼びます。ここでは学童期前半の年齢(6〜9歳前後)の「こころの発達」についてお話していきます。この年齢では、学校社会に入っていくという大きな変化がありますね。
学校という社会に入っていくことは子どもにとって大変ですが、それまでの経験の偏りが調整されるチャンスでもあります。我が家の例でいうと、息子はトマトが好きなため、どうしても家庭内で出す野菜はトマトが多くなってしまいます。しかし、学校の給食ではトマトばかり出るわけではありませんよね。つまり、学校の給食を経験することによって、「食事のときはトマトが出ることが多いだろう」という無自覚に染みついている偏った認識を調整することができるのです。
家庭では子どもに合わせた対応がしやすいものですし、それは悪いことではありません。
しかし、当たり前になっているが故に、子どもは「社会と乖離していること」に気づけません。だからこそ、外の世界(学校)での体験を通して、「今までは当たり前だと思っていた偏り」を調整していくことが大切になるわけです。このようにして、子どもたちは本格的に「外の世界」を知ることになるのです。
「給食が怖い」と登校しぶりに
【事例:登校渋りが続出した小学校】
ある小学校で、入学したばかりの一年生数名が「給食が怖い」と言い、登校を渋るようになった。担任は、苦手なものを減らしたり残したりすることは認めており、厳しい給食指導も行っていない。登校を渋っている数名は同じこども園出身であり、そのこども園では給食をビュッフェ形式(好きなものだけを好きな量だけ食べる)にしていたという。
こども園での経験によって、子どもたちは「給食は好きなものだけを好きな量取って食べるのが普通」という認識があったと考えられます。「食べたくないものは目の前にも置かない」のが当たり前だった子どもたちにとって、一時的とはいえ苦手なものが目の前にやってくる小学校の給食に怖さを感じてしまったのでしょう。この予測を親や教員と話し合い、給食時の声掛け、家庭での給食の捉え方・伝え方を調整することで、事例の子どもたちは問題なく学校に通えるようになっています。この年齢の子どもたちにスクールカウンセラーとして支援していくときには、今までの世界と学校との「段差」を意識し、そこを調整していくことが必要な場合があるのです。
とは言え、事例のこども園のように「これから子どもたちが出合う現実」を考慮しないやり方は困ったものです。今までの場所と新しい場所の「段差」があまりに大きいと、偏りの調整が大変になってしまいます。ビュッフェ形式ならこども園での給食は楽だったでしょうが、そのツケを払うのは「子ども自身」や「次の場所で子どもと関わる人」になることを忘れてはいけません。



