理想を現実に合わせる練習
このような「ままならない現実」を前にして「現実的な努力」を行い、それでも届かない理想を現実に合わせて「下方修正」するからこそ、多くの人は現実を生きることができます。現実から離れた理想の家を建てたけど、ローンを払えず家を手放して借金だけが残る……なんて現実的な生き方とはいえませんからね。人間が万能ではない以上、「ままならない現実」を前にした諦観は生きていれば何度も経験することです。だからこそ、子ども時代から少しずつ「ままならない現実に折り合いをつける練習」をしておくと役立ちます。「ボンドロが欲しい×手に入らない」という構図は、子どもにとって「ままならない現実」を親の支えがある中で体験できる良い機会です。
シールに関しては、子どもたちは近隣の店舗を回って探すという「現実的な努力」をするでしょう。休みの日にちょっと遠くの店舗まで連れていってあげるなど、多少ならば親が協力することもあり得ます。それで手に入ればラッキー、無ければ「ここまでやって見つからないならしょうがないね」と親に支えられつつ気持ちを収めていく。せっかく少し遠い店舗まで足を延ばしたのだから、目の前にある類似品や100均のシールで折り合いをつけようか(=下方修正)。そういうことが大切になります。こうやって子どもたちは「ままならない現実に折り合いをつける練習」をしていくのです。
専業主婦のママ友にシール探しを頼む
大人は「ままならない現実に折り合いをつける練習」に付き合っていけばいいのですが、それがうまくいっていない事例を目にすることが増えました。シール交換にまつわる事例を紹介しましょう。
【事例:シールを手に入れるために奔走する母親】
小学校2年生の女子児童。ボンドロを求めて店舗に行くが、売り切れで入荷も未定である。手に入らないと女子児童が泣いて収拾がつかないため、働いている母親は日中に時間がある専業主婦のママ友に平日昼間のお店巡りを頼んだり、SNSで入荷情報を得たら会社を早退して買いに行ったり、景品がボンドロのクレーンゲームに何度もチャレンジしたり、フリマアプリで定価より高値で購入するなどしている。
この事例では、母親がシールを手に入れるために、かなり手を尽くしているのがわかると思います。ままならない現実に対して「多少ならば親が協力することもあり得ます」と先に述べましたが、この事例では他者(ママ友)を巻き込んだり、金銭的な打撃が生じたりしている時点で「やり過ぎ」な感じがあります。この事例では「ままならない現実に折り合いをつける練習」ではなく、子どもに不快感が出ないように「ボンドロが手に入らない」という現実の方を変えているのです。


