「励まし」は逆効果になる
これは過去のインタビューからの推測の域を出ませんが、きっと親御さんは「頑張れ!」と鼓舞するつもりで、「こんなんじゃ……」と言ったのでしょう。決してお子さんの夢を否定したいわけではなくて、むしろ夢を叶えてほしいからこそ、思わず口をついて出た言葉なのかもしれません。しかし、こうして客観的に文字で見てみると、それがいかに残酷な言葉であるかがわかると思います。
追い詰められた受験生に対して、ネガティブな発言は、百害あって一利なしだと言えます。たったひとりで試験に挑み、その結果を自分の人生として引き受けなければならないという現実を、受験生は誰よりも真剣に受け止めています。どう転んでも本人の人生ですから、腹を括って見守ることが必要かもしれません。
これら3つの事例から見えるのは、親の不安を受験生のお子さんにぶつけている、という点です。親御さんからの相談も受けるので、安心したい気持ちもよくわかります。しかし、気持ちが張り詰めている受験生にとっては、ただ追い詰める要素でしかありません。
ほかにも過去の東大理3合格者の中には、受験直前でメンタルが追い詰められ“家族と会話したり食事したりする時間すら邪魔”と感じていた受験生もいました。「話しかけないでほしい」「1人で勝手に食べるから食事も用意しなくていい」という手紙を書いて両親に渡したそうです。
そのご両親は娘の願いを聞き入れ、受験が終わるまで何も話しかけなかったのだそうです。声を掛けずに信じて待つ選択も、時には必要なのかもしれません。
親は環境を整え、信じて待つことが大切
また、過去の『東大理III』には、保護者の寄稿も数多く掲載されています。大半の保護者が、受験直前期の親の心構えとして「子供の勉強について親が口を出すべきではない」と語っていました。
勉強や成績は本人が誰よりもわかっているし、本人なりにいろいろと考えて思い悩んでいる。だからこそ、親としては環境を整えることだけに注力し、あとは信じて待つことが大切なのだと、述懐しています。
受験は、最終的には自分一人の力で挑まなければならない闘いです。受験生自身も日々の生活の中で、親御さんに支えられていることをよくわかっていますし、感謝もしています。それでもやっぱり、自分の人生の挑戦について横から口を出されれば、反発したくなるものです。
多くの受験生、そして受験生の親御さんから相談を受けてきた立場からすると、ここで必要になるのは「見守る勇気」なのだと感じます。もちろん、不安になるのは受験生だけではありません。親御さんにとっても同じです。真剣に将来を考えていない受験生や、我が子のことを本気で思っていない親御さんなど、いないと言っていいでしょう。だからこそ、その不安とどう向き合うかは、実は親御さん自身の課題でもあります。


