子供の自尊心に傷がつき、学業成績にも影響する
親がデジタル機器に夢中になっているときに子どもが割って入ろうとすると、その後のやりとりは機器類がないときに起こるやりとりと比べて質の低いものになります。親は画面を見ている最中に邪魔されるとあまり意味のある反応ができず、子どもがその反応を敵意のように受けとめることにもつながります。
その結果、子どもはすぐに親が画面を見ているときのやりとりを避けるようになります。邪魔をするとネガティブな反応しか引きだせないからです。これが身の入らないやりとりの悪循環を引き起こして、子どもの自尊心に悪影響を及ぼし、全般的に親子の関係を弱めます。
親子のやりとりの頻度と質が低下すると、子どもの発達にさまざまな影響が出ます。親のスクリーンタイムが「共同注意」の育成を阻むのです。つまり、人が興味を持っているものに自分も注意を向ける能力が育たなくなります。
共同注意は、一生を通して子どもの社会化にきわめて重要な役割を果たし、健全な人間関係を発展させる能力にも、学業成績にも影響します。たとえば養育者と一緒にテレビや動画を視聴するという、ただそれだけの行為が、幼い子どもの言語の習得を支えます。
シンガポールのマクドナルドが行った「スマホオフ運動」
2010年代のはじめにボストンの研究者たちが、ファストフード・レストランでひとり以上の子どもと食事をしている養育者55人を観察しました。程度はさまざまですが、40人の大人が携帯電話をいじっていました。子どもからほぼ完全に注意が離れている大人もいました。養育者の気を引こうとする子どもたちの試みはことごとく無視されました。
その後の研究で、母親の4分の1が無意識のうちにつねにスマートフォンを使っており、そういう母親は子どもとの言葉のやりとりも、非言語のやりとりもかなり少ないことがわかりました。
子どもの72パーセント、そして親の69パーセントが食事中にスマートフォンを使っているという調査結果を受け、マクドナルドはシンガポールの店舗で「ファミリー・プレイデート」というプログラムを試験的にはじめました。親たちに、所持しているデバイスをロッカーに預けてもらうのです。「フォン(電話)はオフ、ファン(楽しみ)はオン」をスローガンに、ハッピーセットをハッピーなテーブルに届けようとするプログラムが展開されました。
残念ながら、試みは短期間で終わりました。ロッカーがあまり使われなかったのです。


