関東圏で1万人超の定員が削減

忘れてはならないもう1つの背景は、2016年から始まった大都市圏における私大定員超過の適正化政策だ。

1980年代より、私大は入学定員よりも多数の学生を受け入れることで、入学金・授業料などを集めて収益を稼ぐビジネスモデルだった。しかし、18歳人口が減少に転じた1992年以降も大学・学部の新設を許容し、入学定員は増加の一途をたどってきた。2010年代に入り、大都市圏の大規模校では定員超過となる一方で、地方を中心とした中小規模校で定員割れが続く状況となってきた。これを是正するための政策が、大学の定員厳格化である。

収容定員を超えると助成金の削減・不交付、新設学部認可の制限などの厳しいペナルティがあり、各大学とも定員を遵守するようになってきた。これにより、関東圏で1万人を超える定員が削減され、地元志向が強まるトレンドの中、関東出身の進学希望者のうち約1%は他地域の大学に進学せざるを得なかったと思われる。

試験を受ける学生
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「準上位層」が地方に目を向けはじめた

毎年5万人近く入学する早慶・MARCHに限定しても、数千人にも上る合格者が消失してしまったのだ。各大学とも推薦入試による入学者割合が増加傾向であることを考慮すると、一般入試の合格者数の絞り込みが広く行われていると考えられる。

実際に私大定員厳格化前後で、早慶・MARCHはもちろんのこと、日東駒専クラスまで難化し、以前であれば確実に受かっていたであろうレベルの受験生でも不合格者が相次いだ。トップ大に肉薄するレベルの学生にとって、進学先の偏差値が2~3ランク下になってしまうケースも出てきたのだ。

以前であれば、関東の大学に拘りのあるハイレベルの受験生の間では、東大・一橋・東京科学大を目指しつつ、早慶やMARCHという安全校を確保して都落ちを防ぐ考え方が一般的であった。しかし、この考え方が成り立たなくなった今、関東圏の準上位層が余り、地方旧帝大に流れ込んでいる可能性が高い。