「エリート流出」説の真相
こうしたデータを見ると、地方の優秀層が大都市圏へ大量流出しているのではないか、という指摘がしばしば聞かれる。若者の地域間移動に関する論文では、大学進学時点で非大都市圏から大都市圏への移動が多いことが指摘されている。関東圏には大学入学者の4割が集中し、地方の上位合格者ほど進学先の選択肢が多く、学力面で上京に対するハードルが低くなるであろうことは想像に難くない。
しかし、東大や京大に占める北海道出身者は単年で増えている年度もあるが、増加傾向とまでは言えない。また、東北出身者の場合、東大・京大への進学者数は、むしろ減少傾向だ。これらのトレンドは最難関国公立大に限ったことではなく、トップ私大の二大双璧をなす早稲田大学でも、関東圏を除く大半の都道府県出身者は過去10年間で一貫して減っている。
そもそも多くの都道府県において、大学進学における県外進学者割合は近年低下しており、学力優秀層においても例外ではないようだ。このように、地方旧帝大における関東勢の台頭について、優秀層の大都市圏流出で説明するには無理があり、別の構造的要因が潜んでいる可能性が高い。
東北の「大学進学者数」が激減している
地方旧帝大の地元比率低下を語る上で、避けて通れないのが人口動態だ。総務省の人口推計をもとに、数年後に大学進学を迎える10~14歳の都道府県別人口推移を地域別にまとめたものが図表3である。少子化の影響で全ての都道府県において人口は減っているが、北海道・東北エリアではたった10年で20%も縮小している。大学進学率の上昇幅が全国平均よりも上振れで推移しているとはいえ、将来の母集団がここまで減れば進学者数の激減は必然であろう。
さらに深刻なのは、東北の中でも全国トップクラスのポテンシャルを示す秋田県や青森県の大学進学率が極端に低いという事実だ。特に秋田県は全国学力・学習状況調査においてトップクラスの常連だが、大学進学率・過去10年間の上昇幅ともにワースト10という状況だ。
このように、優秀な生徒であっても大学進学を選ばないケースも多く、旧帝大レベルに届く層の絶対数を地元で確保できないというミスマッチが生じている。その穴を埋めるため、他地域からの学生に依存せざるを得ない社会構造となっていて、人口比率の多い関東圏の学生にチャンスが回っているのだ。


