生徒のほとんどは“普通”の子ども
吉村校長によると「英語を武器にして、世界中のどこにいてもより良い未来を作るリーダーを育成する」というのが叡智学園のミッションだ。そう聞くと、さぞかし富裕層の優秀な子どもが集まっているのかと思いきや、意外にも「県内出身の、いわゆる一般的な家庭に育った“普通”の子どもが多い」とも吉村校長は話す。
「入学当初、全員が英語を得意なわけではありません。受検科目にも英語はありません」(吉村校長)
叡智学園の選抜試験は、通常の公立中学と異なり「二段構え」だ。
1次選抜では、他の県立中学と同様に思考力や創造力といった児童のポテンシャルを測る適性検査を実施する。次いで、適性検査の合格者を対象に2泊3日で泊りがけの選抜を行う。同校は全寮制でもあることから、集団で課題解決に当たり、個人の資質だけではなく「協働」の能力も見て行くという。
入学した生徒たちは「2つの教科を英語で学ぶ」というIBの条件に則り、年次が進むにつれて英語だけでなく、数学の授業もすべて英語で行うようになっていく。
三平方の定理を英語で学ぶ
例えば、中学3年生の数学では、三平方の定理を平面ではなく段ボール箱を使うという。
これは、できるだけ生活に根差した教材を用いるIB教育の特徴だ。当然ながら端数が出てきて数字がぴったりと合うことはない。だが、そうした負荷をかかえながら主体的に勉強に向き合うことで、脳の定着がよいという。この授業は、すべて英語で行われている。
英語に親しみがないと大変そうな印象を受ける。なぜ最初から英語ができる生徒をあつめないのか。吉村校長は、「12歳時の英語の能力よりも、これからの時代を考えて、英語を前向きに勉強していこう、という思いがある子の方が、重要と考えています。そのために、われわれもさまざまなプログラムを用意しています」と話す。
例えば、単なる英語の知識量だけでなく、持っている知識をいかに使いこなせるかを主眼に置く「ケンブリッジ英検」のプログラムや、オンライン英会話なども組み込みつつ、高校では英国留学なども実施する。
高校からは留学生を受け入れ、中高全体の約1割(高校のみでは2割)が海外出身となるので、日常的に英語が聞こえてくるような環境もあって、“普通の子ども”たちでも自然に英語を使いこなせるようになっていくのだという。



