一般的な公立校との違い
叡智学園で実施する教育は「知識の詰め込み」ではなく、生徒個々人の関心を基に探究していく形をとる。例えば国語や数学といった一般的な科目では、前提となる知識の学習や大枠の共有を済ませた後は、各自がそれぞれのテーマに基づいて学習、発表するという。
保健体育科の教員で、県内の公立校から赴任してきた和田教諭は、前の職場と叡智学園との違いに触れながら、次のように話す。
「先日、保健の授業で中学2年生向けに飲酒や薬物などを教える単元を終えました。以前勤めていた学校では、それぞれに関する知識を教える形だったところ、叡智学園では薬物依存の危険性についてしっかりと説明をした上で、生徒たちの関心に沿って、自分流の啓発映像を作ってもらう形にしています。
30秒の動画作成を課題として、まずはテレビやネットで流れている啓発動画を見せる。さらに、薬物の恐ろしさを指導する――生徒が自ら気付きを得て、主体的に自分流の動画を作るために、教員としてもさまざまな工夫を凝らしています」
徹夜・一夜漬けは通用しない
叡智学園では、いわゆる定期試験の形をとっていない。では、生徒たちの評価はどうしているのか。
まず単元ごとにレポートの作成がある。評価対象は、完成したレポートだけでなく、そこに至るまでのプロセスもすべて含まれるという。ちなみに、評価規準はあらかじめ生徒に明示されている。
興味深いのは、単元の終わりに、評価規準に対し、生徒自身の自己評価があることだ。それを受け、教員が最終的な評価を決める。これはIBの特徴である「ルーブリック評価」というそうだ。
吉村校長は「一般的な学校で行われている中間試験や期末試験よりも、もっと短いサイクルで生徒たちの習熟度を測っていくため、徹夜して一夜漬けすればどうにかなる、という考え方は全く通用しません」と話す。
主体的な授業は生徒にとっても大変だが、それは授業を行う教員にとっても同じのようだ。
和田教諭は「前の学校から叡智学園に来て、何より教職員に求められるアウトプットの大きさに驚きました。生徒だけでなく、自分も日々学びの機会を得られていると感じます」とも話す。
どうすれば生徒たちが前向きに、そして自ら学習に向かうか。その点において、教職員も何を表現し、生徒たちに伝えるかを考え抜く必要があり、責任は重い。週に一度のIBに関する研修などを通して、アップデートを続けている。



