1918年創業。物流事業と機工事業を国内外で展開し、顧客ニーズに合わせたソリューションでビジネスの効率化や競争力強化に貢献。長期ビジョン「Vision2030」で、あるべき姿として「『人・社会・環境への感謝』を事業で実現する人間力企業」を掲げる。
1976年生まれ。2002年成蹊大学経済学部を卒業し、山九に入社。野村證券への出向を経て、神戸支店、君津支店などで勤務。千葉支店支店長、経営企画部長、エリア統括、代表取締役専務などを経て、16年代表取締役社長に就任。25年より現職。
当社は米粒よりも小さな半導体から日用品、時には数千トンにも及ぶ橋梁まで輸送し、一方では大型プラントの設備工事やメンテナンスまで行っています。いずれにおいても土台にあるのは“人の力”です。お客さまからは「山九の技術力」を評価いただきますが、技術の価値を引き出すにはそれを巧みに扱う“技能”が欠かせない。当社の強みは、各種の設備・機器を操る世界レベルの技能だと自負しています。技術の多くはお金で買えますが、技能は長い時間をかけて培っていく必要がある。優れた技能を継承し、進化させていく組織の構築は経営トップの大事な仕事だと考えています。
そこで、私が重視していることの一つが現場の社員をはじめ誰もが「自ら考え、それを声に出して表明できる」環境の整備です。これは山九入社直後に出向した証券会社での自身の経験が基になっています。当時、部署のメンバー全員がアイデアを出し合う会議で、私は「大学出たての人間の意見に価値はないだろう」とあまり発言しませんでした。しかし上司から「年齢や経験は関係ない。人はそれぞれ異なる人生を歩んでおり、君にしか言えないこともある」と注意を受けたのです。「確かに。自分も積極的に発言すべき」。そう思い直すと、あることに気付きました。意見を述べるには、部署の仕事や社会の動きを勉強しなければならない。インプットの大切さを知り、意識するようになったのです。
私が山九に根付かせたいのは、まさにそうした姿勢であり、行動です。業務の課題や社会のニーズに目を向け、自らの考えをアップデートする。それを皆が率直にアウトプットし、議論していく。それを繰り返していくことが技能や仕事の質の向上につながると信じています。
今、物流や生産の現場でもAIやロボットなどの活用が急速に進んでいます。しかし、不具合が生じたときの対処をはじめ人にしかできないことは多くあり、技術のより良い活用方法を考えるのも人です。私自身、支店勤務時代に港で荷物の積み下ろしなども経験しました。その中で熟練の職人ともいえる社員を目の当たりにし、現場における人の力、そして技能の重要性を強く実感しています。基本理念として「人を大切にすること」を掲げている山九が果たすべき役割は今後いっそう大きくなっていくに違いありません。
世界であらゆる事業環境に対応していける体制を
激変する事業環境に対応すべく、当社は今年、中期経営計画の見直しを行いました。まず物流事業では現場で働く社員が長年磨き続けてきた技能を高く評価していただけるお客さまに経営資源を集中していきます。
そして機工事業ではさらなる人材の育成が重要なテーマ。山九の動員力は、高度な技術・技能と並ぶ大きな強みです。国内では各種プラントの経年劣化が社会課題となっており、今後、メンテナンスや更新の需要が高まっていくと予想されます。それは当社にとって大きな事業機会です。ただし、国内の生産施設がこれまでどおり維持され続けるとは限りません。その意味では、世界中どこでも高い作業レベルを実現できる体制を整え、グローバルであらゆる事業環境に対応していきたい。当社の使命は、社会やお客さまにとって必要不可欠な存在を目指し、普遍的な価値を生み出すこと。そうした思いで、世界の産業を支えていきたいと考えています。
「人を大切にすること」が組織の強さ、技能継承のベース
全社一丸となって経営計画を推進していく上でも、基本理念である「人を大切にすること」の実践は重要になります。それを支えるのは、常に相手の立場になって考え、行動することです。実際当社には「より良い仕事になるならば、妥協はしない」、そんな価値観が浸透し、組織の強さ、技能継承のベースになっています。この企業文化を守ることも経営者の大切な仕事です。
当社のお客さまにおいても、現在、DXや脱炭素の推進をはじめ対応すべき課題は高度化しています。そうした状況は、物流、機工のプロフェッショナルである私たちの腕の見せどころでもある。お話ししたとおり、常にインプットを心掛け、当社自身もアップデートを重ねながら、ソリューションを提供していきます。単に要望に応えるのではなく、こちらから提案を行い、お客さまをリードする形で課題解決を実現していくことが私たちの役割だと思っています。
自社の業績が伸びるのはもちろん喜ばしいことですが、私が何よりうれしいのは「山九の仕事ぶりはすごいね!」とお客さまから社員が評価されることです。「山九に頼めば何とかなる」。今後もそうした仕事を通じ、お客さま、そして社会にとってなくてはならない存在となることを目指していきますので、ロジスティクスやプラントエンジニアリングに関わる課題がありましたら、ぜひ山九にご相談ください。