「スマート」関連で
高い技術をもつ日本

再生可能エネルギーの普及へ向け、大きな一歩を踏み出した日本社会。そのリード役の一つと目されているのが、「スマートハウス」など、エネルギーを利用するサイドにおける先駆的な取り組みだ。また電力会社などエネルギーの供給者と、家庭・ビル・工場などの需要者とをつなぐ「スマートグリッド(次世代電力網)」の本格展開もポイントとなる。

「スマートとは“賢い”という意味。つまりITネットワークなどを活用し、エネルギーを賢く・無駄なく・有効活用しよう、というのがスマートハウスやスマートコミュニティの考え方です。家庭やビルなど、個別のエネルギー管理だけでなく、地域コミュニティ単位で、エネルギーの需給バランスを最適化していく。この概念の核となるのが、スマートグリッドです。また電気自動車などの交通システムを組み込むことで、街全体のエネルギー効率化が図れます」

電力システムの円滑運用には、需要と供給の最適バランスが欠かせない。「特に天候に左右される太陽光や風力などからの供給が大量に増えると、電力会社では周波数変動や電圧上昇などの課題が出てくる」(早稲田氏)

それを適正に調整するのがスマートグリッドの役割である。家庭では「HEMS(ホーム・エネルギー・マネジメント・システム)」が、電気機器などを自動コントロールし、電気使用量を「見える化」することで、再生可能エネルギーの効率活用を支えている。

「HEMSのほか、ビルのエネルギーを管理する『BEMS』、そして工場を対象とする『FEMS』などの制御技術に関して、日本は世界の最先端を走っています。また余剰電力をためる蓄電池の技術でも先を行っている。そしてもう一つ、日本にはオイルショック以来、長年磨き上げてきた“省エネ技術”があります。再生可能エネルギーと、この省エネ技術をうまく組み合わせているのが日本の大きな強みになります」

「世界への貢献」も
重要な視点の一つ

いま全国各地で「スマートコミュニティ」の実証試験が進められている。これは産学官が一体となった国家プロジェクト。再生可能エネルギーの大量導入などとあわせ、地域ぐるみでエネルギーの“地産地消”を進めるのが狙いだ。また企業グループが独自に自治体と連携し、スマートタウンを開発する事業なども注目されている。

「スマートコミュニティで重要なことの一つは、自治体のリーダ―シップ。そこに暮らす人たちが主役でなければいけません。その点で、私は地方、それも人口規模が小さいまちにチャンスがある、と見ています。風力、地熱、バイオマスなど、地方には自然エネルギーが豊富な地域が多い。また住民の協力や合意も得やすい。産業化による地域振興策としても大いに期待できます」

地域発で進む、新たな社会システムとしてのスマートコミュニティ。再生可能エネルギーの普及には、国家のエネルギー安全保障や温暖化対策はもとより、成長戦略、産業振興、技術革新、地域活性化、さらに生活者としての暮らし方に至るまで、さまざまなビジョンが詰まっている。そして早稲田氏がもう一つ強調するのが「世界への貢献」という視点だ。

「太陽光発電もそうですが、風力発電分野でも基幹部材や洋上風力発電システムなどで、世界における日本の存在感は大きい。また波力や潮流を利用する海洋エネルギー発電でも、将来的には日本の高度技術が生きる可能性がある。再生可能エネルギーの普及は地球規模の課題であり、産油国の関心も高い。日本における先進的な取り組みが、グローバルなレベルでの貢献にも通じていく。これはかなり面白いチャレンジだと期待しています」