太陽光や風力、地熱など、自然エネルギーの普及を後押しする施策として、昨年7月にスタートした「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」。「経済的メリットとともに、エコロジーへの意識も高まった」と三菱総合研究所の早稲田聡主席研究員は、その導入効果を評価する。再生可能エネルギーの普及で何が変わるのか。早稲田氏に聞いた。
世界が再び日本に注目しています

早稲田 聡●わせだ・さとし
株式会社三菱総合研究所 主席研究員
環境・エネルギー研究本部
1992年東京大学大学院工業系研究科修士課程修了後、株式会社三菱総合研究所に入社。省エネルギー・再生可能エネルギーを中心に、政策立案、技術評価、事業コンサルティングを手がける。

太陽光発電の導入量が
急速に拡大中

「このインパクトはとても大きい。太陽光発電の分野を日本が再びリードする可能性が出てきました」──。

三菱総研の早稲田聡氏は、「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」の導入効果をこう表現する。ご存じのとおり、この制度はコストの高い再生可能エネルギーを電力会社が一定価格で買い取ることを保証するもの。その対象は「事業用」では太陽光、風力、中小水力(3万キロワット未満)、地熱、バイオマス(生物資源)発電の5種類。また「家庭用」としては、太陽光発電が買い取り対象となっている。

「事業用のメガソーラーが認められたことは一つのポイント。欧州で再生可能エネルギーが一気に普及したのは、同様の買取制度の施行で、メガソーラーが急拡大したためです。この制度により、事業者は設備コストの回収計画や事業計画が立てやすくなります。もちろん一般家庭でも、買取価格が保証されることで、太陽光パネルをつけるインセンティブはより大きなものになるでしょう」

固定価格買取制度前を含めた昨年4月から今年2月末までに運転を開始した太陽光発電設備の設備容量は、155.9万キロワット。原子力発電所一基分の発電量が約100万キロワットだから、すでにそれを超える太陽光発電が稼働し始めた計算になる。さらに認定を受けた太陽光発電となると、1225.8万キロワットにも達する。

太陽光発電については、天候や時間帯により発電量が変わるなどの課題があるが、それを差し引いてもこの規模感は、今後への期待を抱かせるのに十分だ。

「1990年代の日本は太陽光発電の先進国でした。そしていま再び世界の主要市場になりつつある。産業振興や技術開発促進の面からも期待がもてます。一方注意しなければいけないのが、買取価格の設定など、制度の運用面。スペインやドイツでは、当初の買取価格を高めに設定し、その後大幅に引き下げしたことなどで混乱を招いた。やはり長期で安定感のある制度運用が不可欠です」