日本のほうが、はるかにスコアが良い
近年、PISAには途上国も多く参加するようになっており、参加国数が増えているため、順位だけ見ると上位のように見えるかもしれない。しかし、先進国を中心としたOECD加盟国の中で見れば、フィンランドは平均よりやや高い程度の、ごく平凡な参加国の一つに過ぎなくなっており、直近のPISA2022では日本の方がはるかに良いスコアを出している(図表3)。
どうやらフィンランド自身も、PISA2003やPISA2006におけるPISAの好成績に戸惑いを見せていたようだ。同国政府や教育産業がフィンランド式の教育モデルを世界中に売り込む一方で、フィンランドの教育関係者の何人もが、世界中の教育関係者から好成績の理由について尋ねられて、返答に困っていると語っていた。
私自身も、そうした質問を何人かのフィンランドの教育関係者にぶつけてみたことがあるが、彼らからは口々に、「正直に言って、そこまで世界から注目されるほどのことはやっていない」「なぜ好成績につながっているのか、明確な理由はわからない」「むしろ、日本などアジアのPISA上位国から学ぶ必要があると思っている」といった戸惑いの声を聞いてきたのである。
“好成績”の理由がわかっていなかった
もちろん、日本とも通じる謙虚さを持つ北欧の国らしい側面もあるだろうし、あるいは、筆者がPISA上位国である日本人であることから、社交辞令として言った部分もあるかもしれない。しかし、今から考えれば、彼らのこうしたコメントは、本音を吐露したものだったとも思う。つまり、彼ら自身にも、好成績の理由がよくわかっていなかったということなのだ。もし、PISA好成績の理由について的確に分析できていれば、直近のような低迷した状況にはならなかったはずだ。
PISAスコアの低迷については、フィンランド国内でも、かなりの議論を惹起しており、中には「外国からの視察団ばかり受け入れていたから、本業である授業がおろそかになってしまったのではないか」といった意見も出ている。
PISA2022の結果公表後まもなく、フィンランド教育省の大臣が出したコメントでは、「フィンランドのPISAの結果は低下傾向が続いています。重要なのは、スキルの深刻な低下です。だからこそ、結果については重く受け止めなければなりません」としており、大臣自ら反省の弁を語っている。


