監督は怒鳴り、罰も与える指導を見直す

考えあぐねているとき、本職である教師の経験からヒントをもらった。教育現場で少しずつ広がり始めた「主体的学び(アクティブラーニング)」である。大まかに言えば「目の前の課題について自ら考え、解決法を探る力をつける教育」を指す言葉だ。そのためには、教師が一方的に何かを教えたり抑圧したりせず、子どもが主体的に動いたことを認めて、ほめることが重要だと森本は理解した。

この教育観はバブル崩壊後の1990年代から関心を寄せられるようになった。当時、教員として中堅に差し掛かっていた森本は、こう振り返る。

「学校でも、子どもを認めてほめて育てようという気運が高まりました。学校が変わろうとしているのに、ミニバスで厳しくやって伸びるわけがないと気づけたのが大きかった。怒って圧力をかけるのではなく、いいところをほめて挑戦させる、頑張らせるという指導スタイルに変わっていきました」

森本は「自分で変えた」と言わずに、「変わっていった」と表現する。

「こんなことを言ったら叱られると思うのですが、僕は指導が楽しくて仕方なくてミニバス中心に教員生活を送っていました。そんなふうでしたから、『あいつミニバスばっかしてるじゃん』とまわりに言われるのが嫌で、教員の仕事を頑張っていたんです。だから(主体的学びに関する)講習などにも積極的に参加しました」

子どもが「腹落ち」するように導く

学校では、トイレのスリッパを揃えた児童に「ありがとうね」と声をかけることから始めた。随所で子どもを認めることを意識すると、子どもたちが授業やさまざまな活動で主体的に取り組み始めるのを実感した。

学校で学んだ新しい教育観は、ミニバスのコーチングにも大いに役立った。いいプレーをほめると、子どもがまたやろうとする姿が見えた。試合の結果ではなく、頑張るプロセスをほめた。

「子どもが自分からやらにゃ身につかんと腹落ちして、バスケットボールを好きになってもらえるよう、楽しめる練習を心がけました」

ある日、他チームの監督たちから「先生のところの選手は、なんであんなに頑張るんだ?」と感心された。怒ったり、厳しい言葉で追い込んだりしないのに、全員がサボらない「頑張るチーム」になっていた。それが2006年から2007年にかけてのことだ。

その2年後の2009年秋、小学2年生の河村が入団してきた。

ブルズの一員としてペーサーズ戦でプレーする河村勇輝選手(右)=ラスベガス、2025年7月
写真=NBAE・ゲッティ/共同通信社
ブルズの一員としてペーサーズ戦でプレーする河村勇輝選手(右)=ラスベガス、2025年7月