「会社生活のストレスの原因は人間関係。でもユーモアでつらい人間関係がラクになる。ユーモアの力は偉大です!」

そう言うのは、サントリー社員でありながら、エッセイストとしても活躍する斎藤由香氏だ。

斎藤氏は、歌人の斎藤茂吉を祖父、作家の北杜夫を父、精神科医の斎藤茂太を伯父に持つ。サラリーマンとは無縁の世界で育ったが、サントリーに入社して以来、「社内のユーモアのお陰で、最高に楽しい会社生活を過ごしている」と語る。

「新入社員で広報部に配属されたとき、『部長と課長はどちらがエライんですか?』と真顔で聞き、みんなに絶句されました。しかし、その後、ドッと笑いが起きた。そのときに、『この会社はあたたかいな』と心から救われました」

その後、健康食品事業部に異動になった斎藤氏は、健康食品「マカ」を精力的に宣伝する姿が週刊新潮の編集長の目にとまり、「サントリーで精力剤をPRしているバカ女がいる」(斎藤氏)ということで、連載の依頼がくる。以来10年間にわたり「窓際OL」シリーズを続けている。「食べてばかりの胃袋部長」「役員に怒られてばかりの小ネズミ部長」「女の子大好きのキャバクラ課長」など、ユーモラスなサントリー社員たちの生態を名指しで書き綴る。社内での立場は大丈夫なのだろうか?

実は連載開始前、上司に許諾を相談すると「おもろいからやったらエエやないか。人事部に確認? 原稿チェック? 必要ないよ」との返事。ついには佐治信忠社長が連載を目にするところとなり、秘書とこんな会話が交わされたという。

「こんなアホな社員ばかりいて大丈夫やろか」

「社長、それを書いているのはうちの社員ですよ」

「え、うちの? そうか。ワハハハ!」

後日、秘書から「社長が笑っていたよ」と言われただけで、一切おとがめなし。社長のことも「せっかちで怒りっぽい」などと評しているにもかかわらず、だ。