上司の間違いを指摘するときは細心の気遣いが必要だ。田中康之氏が推奨するのは「グルになる」という手法である。

「お願いしますよ~。○○さんが上にいかないとポストが詰まって僕も出世できないじゃないですか」

ここでの要点は「私はあなたを尊敬していて一蓮托生の覚悟です。だからこそあえて間違いを指摘します。出世頭のあなたに引っ張ってもらいたいからです」というニュアンスを込めることだ。健気でちょっと図々しい部下からの諫言ならプライドの高い上司も聞く耳を持つはず。

逆に、いじられ上手の上司に関しては、「いじられたいポイント」を探し出す。そのポイントさえ誤らなければ、かなり激しい攻撃を加えてもかまわない。

例えば、田中氏が勤務するリンクアンドモチベーションには、働きながら社会人大学院に通う勉強熱心な役員がいる。親しい間柄の田中氏は、その役員がささいなミスをすると「だから学生は嫌なんだよ!」と叫ぶという。「周囲は仰天しますが、完全にセーフティゾーンです」。

田中氏によれば、ユーモアの基本は「相手基点」。ユーモアを受け取る相手の心地良いところを触れ、自分については「かわいく貶める」のがポイントだ。下ネタや宗教・思想ネタは受け取る相手によって許容度が違うので、よほど親しくない限りは触れないのが無難である。

自己満足の「ユーモア」は、誰かが不快に感じた場合には、セクハラやパワハラと受け止められる危険性も高まる。ユーモアの主役はあくまで相手であり、その目的は不要な緊張を緩和し自由闊達な雰囲気をつくることなのだ。

加えて、田中氏は「ユーモアはあくまでも手段」だと注意を促す。状況によっては笑いが一切許されないこともある。

リンクアンドモチベーション モチベーション研究所所長 田中康之
1976年、東京都生まれ。慶應義塾大学卒業後、野村証券を経て、2001年リンクアンドモチベーション入社。2010年より同社の研究機関であるモチベーション研究所の所長を務める。モチベーションの源泉は「パン+α」。