ミドリムシ燃料:大量培養は世界初。CO2吸収する新エネ

動物と植物の両方の性質をもつ変な生き物「ミドリムシ」を原料とするバイオマス燃料が、まったく新しい純国産エネルギーとして注目を集めている。

人工培養を行うバイオリアクター/ミドリムシは体長0.05mmの藻の一種。完全栄養食としても期待を集めている。

開発に成功したのは、東京大学の研究室から生まれたバイオベンチャーのユーグレナ。ユーグレナとはミドリムシの学術名だ。社長の出雲充氏は「よく『青虫の仲間ですか?』と誤解されますがミドリムシは体長0.05ミリメートルの藻の1種。5億年前から生息し食物連鎖の最も下層で、地球の全生物の栄養を支える生き物です」と説明する。

出雲氏とミドリムシとの出合いは2000年のこと。東大農学部の後輩で、現在はユーグレナの取締役を務める鈴木健吾氏から「ミドリムシは植物のように光合成を行い、空気中の二酸化炭素を吸収して栄養分を体内に蓄え、動物のように細胞を変形させて移動する。DHAなど動物由来のアミノ酸と、カロチンなど植物性の栄養素両方を持っているため、理論上、人間に必要なすべての栄養素を作り出せる」と聞いた。学生時代にバングラデシュを訪れ、「世界の食料問題を解決したい」と考えていた出雲氏は、「CO2削減を果たしつつ完全栄養食にもなるミドリムシこそ、人類を救う食料だ」と確信する。

当時、ミドリムシの大量培養は前例がなかったが、出雲氏と鈴木氏は日本中の研究者を訪ね歩き、基礎技術を確立。05年に石垣島で屋外での大量培養に成功する。その後、ユーグレナはミドリムシを原料とするサプリメントや健康食品を次々と開発。資本金4億6065万円、社員数41名の企業となった。そして次の大きな一手として、構想するのが、ミドリムシから作り出すバイオ燃料の開発だ。

既存のバイオ燃料は生産に多くの農地が必要で、食糧問題にも関わる。一方、ミドリムシは培養に土を必要とせず、太陽の光と水さえあれば生産が可能。単位面積あたりの光合成の能力も高く、熱帯雨林の数倍にのぼる。

さらに灯油に近い成分が取り出せるため、精製すればジェット燃料に適することもわかった。このため航空会社からの要望を受け、10年から新日本石油(当時)、日立プラントテクノロジーとの3社で共同研究をはじめた。18年までの事業化を目指している。

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