グーグル・カー:ネバダ州で3台が自走。国内走行は「議論なし」

自動車が変わろうとしている。2010年10月、米グーグルのエリック・シュミット会長は講演で「車がコンピューターより前に発明されたのは間違いだ。車は自分で走るべきだ」と発言した。その直後、同社のブログで自動走行システム「グーグル・カー」の存在が公表され、12年5月、ついに公道を自動走行する様子が「YouTube」で公開され、世界中に衝撃を与えた。

経営陣が全面支援/左から会長のエリック・シュミット、創業者のラリー・ペイジ、セルゲイ・ブリン。同社の自信がみえる。

ビデオが収録されたのはアメリカのネバダ州だ。グーグルの開発を受けて、12年3月に自動走行車の公道での運転を認める法律を全米で初めて施行。2人以上が車に乗り込むことを条件に免許が交付された。グーグルによると、これまでに3台分のナンバープレートを手にしているという。

ビデオでは、小型のレーザー機器を屋根に載せたトヨタの「プリウス」が街中を自動走行する様子が紹介されている。レーザーやカメラ、各種のセンサーで周囲を測定しながら、グーグルのもつ膨大な地図データと車の位置情報を重ね合わせて走る。横断する歩行者がいれば自動で停車し、ハイウエーの流れにもスムーズに溶け込む。

グーグル・カーは、イノベーションに力点を置くアメリカの産業政策の賜物ともいえる。開発責任者のセバスチャン・スラン氏はスタンフォード大学教授などを歴任し、人工知能の研究者として名高い。開発にあたっては著名なロボットカーレースのエンジニアを結集させたという。

日本でも自動運転の実用化に向けた取り組みはある。国交省は12年6月に「オートパイロットシステムに関する検討会」を開催。13年3月までに中間報告をまとめるという。国内では、08年から日本自動車研究所などが高速道路でトラックの自動隊列走行の実験を行っている。だが実験は供用前の道路やテストコースを利用したもので、公道で走行試験が行われたケースはまだない。

またグーグル・カーの日本導入には、事故の責任主体についてなど、突っ込んだ議論が必要になるはずだが、警察庁広報室は「現時点では『自動運転車』に関する具体的な課題整理や議論は行っていない」としている。