「テレビ業界を取り巻く環境は、今後ますます厳しさを増していくものと思われます。そうした中で、私たちTBSは最も厳しい立場に立たされていると言っても過言ではありません」――これはTBSHDの石原俊爾社長が昨年11月末、社員全員に送った「社員の皆さま」と題した手紙の一節。上場企業の社長が全社員に宛てて手紙を送るとは、TBS経営陣の危機感が反映されているようだ。

視聴率は「テレビの通貨」と呼ばれる。その高さに比例して広告収入が増えるからだ。TBSはその視聴率でテレビ朝日、日本テレビ、フジテレビの後塵を拝し、テレビ東京を下回るケースも増えている。

今年度第2四半期の連結累計では、ロンドン五輪などの恩恵で、日本テレビは広告収入が前年同期比でタイム6.3%増、スポット9.4%増。同社と視聴率首位を争ったテレビ朝日も同8.4%増、9.5%増と急伸した。しかし、ゴールデンタイムの視聴率が1ケタ台に低迷するTBSは同4.3%、7.1%増に留まり、投資有価証券の評価損の影響もあって、59億円の純損失を計上した。

「昨年末の総選挙特番もテレビ東京に負けてビリ。視聴率を伸ばさないと広告収入は増えないので、社長みずから社員に手紙を出し“視聴率が取れる企画を出せ”と尻を叩いている。だが内容が抽象的。社内では“何が言いたいのか意味がよくわからない”と不評です」(TBS社員)

確かに石原社長の手紙を読むと「最優先課題はコンテンツの強化」とあっても、具体的な提言は皆無に等しい。「(テレビは)人を社会化する礎」「人を文化的存在にする」「我々は今、どういう時代にいるのか」といった抽象論が目立つ。

「社長は『仕事が社会に何を投げかけるのか、といったことを常に考えろ』と手紙に書いているが、そんなことはこれまでもやってきた。全社員に番組の企画を出せと呼びかけているのは、要するに経営側にアイデアがないから。経営トップらにリーダーシップも知恵もないので、社員の知恵を借りるというのはダメ会社の典型ではないか」(同社中堅社員)

石原氏は「TBSの一員として、誇りと自信を持って、再生への道を歩み始めましょう」と呼びかけているが、道のりは遠そうだ。

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