安倍晋三首相の政権は、永田町で「安倍・麻生政権」と呼ばれている。安倍氏が何かにつけて盟友の麻生太郎副総理・財務相に相談し物事を決めているからだ。

「自民党麻生派の領袖である麻生元首相と、高村派の高村正彦副総裁が早々と安倍支持を表明したことで流れができ、安倍氏はライバルの石破茂幹事長を抑えて当選できた。2人のポストはその論功行賞。組閣・党役員人事でも、安倍氏は麻生氏に相談して決めた」(安倍氏周辺)

安倍氏が麻生氏ら実力者を頼るのは、党内では「犬猿の仲の石破氏を封じ込めるため」と見られている。

「安倍氏が内閣に大物を集める一方、党三役に高市早苗、野田聖子両氏を据えたのは石破執行部の弱体化が狙い。地方を中心に党内人気が高い石破氏を安倍氏は警戒している」(自民党幹部)

その安倍首相が最も重視しているのが訪米。民主党政権でギクシャクした日米関係を再構築するため、安倍氏は外遊先の一番手として米国訪問を熱望。2月の朴槿恵(パク・クネ)韓国大統領就任式前の訪米の意向を米政府に伝えているが、障害になっているのがTPPだ。

「米国が求めているTPPに日本が参加するのかどうか、見通しが立っていないこともあり日程調整が難航。TPPという土産なしの訪米では米国側にメリットが少ない」と外務省関係者は語る。

自民党内にはTPPへの参加反対論が根強く、TPP反対議連には200人近くの自民党議員が集まった。安倍氏が党内の反対を押し切ってTPP参加を表明した場合、党内が大混乱に陥るのは必至。しかも今夏には参院選も控えている。

先の外務省関係者は、「国会運営の円滑化のためには参院選勝利による衆参ネジレ解消が必須。ところが、TPPが参院選の争点になったら農業票が逃げ、自民党は地方で苦戦を強いられる。安倍氏としてもスンナリTPP参加を表明しにくい状況にある」と話す。

アキレス腱はほかにもある。

「全国紙などによる安倍政権スタート時の内閣支持率は、いずれも野田政権発足時より低い。国民は安倍氏について“一度政権を放り出した無責任な政治家”と醒めた目で見ている。参院選の結果次第では安倍辞任・石破政権誕生の可能性もある」(全国紙政治部デスク)

加えて健康問題も抱えた安倍氏。新年早々、政権運営は視界不良だ。

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