映画「マトリックス」では、機械に人間が支配された後の世界が描かれていた。そんな未来が訪れることがありうるのだろうか。

08年に設立された、米シンギュラリティ大学のHP。グーグル、ノキアなどが資金を拠出している。

「コンピュータなどの機械が人間の知性を超える日のことをシンギュラリティ(技術的特異点)と呼ぶ。この語が生まれたきっかけは、未来学者レイ・カーツワイルの『ポスト・ヒューマン誕生』という本だ」と富士通総研・上席主任研究員の浜屋敏氏は言う。その影響は大きく、のちに米国にはシンギュラリティ大学が設立されている。

レイ・カーツワイルは、同書の中で、ムーアの法則から考えてその時期は2045年だと予測している。たとえば人間の演算速度は毎秒100京回という説があるが、日本のスーパーコンピュータ「京」の処理能力は毎秒1京回以上。無論単純に比較はできないが、徐々に現実味を帯びてきていることもたしかだ。また、技術的特異点は、人工知能(AI)だけでなくナノテクノロジーによる危険性を唱える専門家も多い。

シンギュラリティを迎えたときに何が起こるのかは、専門家でも想像もできない。ある日突然人工知能が人間の処理能力を超え、超人間的知能に圧倒されたことにすら気づかないまま淘汰される──そんな絵空事のようなこともないとは言えない。

しかし、可能性の有無が重要なわけでもない。未来学者のポール・サフォー氏は「シンギュラリティというコンセプトを使って、現在人間の知識に何が起こっているかを探るということ。マシーンとの新しい共生を考えることでもある」と語っている。