1冊の本は約10万字で構成されている。その本を著者が自ら書く場合もあれば、著者にインタビューをしてライターが書くこともある。ライターは、どんなテクニックで10万字を綴っているのか。ライターの佐藤友美さんの著書『本を出したい』(CCCメディアハウス)より一部を紹介しよう――。
ラップトップキーボード上の人間の手のクローズアップ
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最後まで読んでもらえる文章に必要なこと

10万字の文章は、長い。だいぶ、長いです。そこで私たちライターはできる限り読者が途中で離脱しないように、さまざまな工夫を織り込んで文章を書いています。ここではその中から、参考になりそうなことをお伝えします。

具体的な話をする前に、ひとつ、考えておきたいことがあります。書籍の原稿の「ゴール」は何でしょうか。読者がどのような状態になれば、その原稿は「成功した」と言えるでしょうか。

これは、書籍のジャンルによっても差があると思いますが、ビジネス書、実用書、自己啓発書などのゴールは、「読者の態度変容」、つまり「読む前と読んだ後の読者が変わっていること」ではないかと私は考えます。

変わる内容はさまざまです。考え方が変わる場合もあります。態度が変わる場合もあります。行動が変わる場合もあります。

いずれにしても「この本を読んだことで、○○について考えた」「この本を読んだことで、○○ができるようになった」といった感想が聞ければ、その本は読者の役に立ったといえるでしょう。

そのゴールのためにも、まずいったん、「最後まで興味を持って読んでもらえる原稿」を目指します。読者を途中で離脱させないために、私たちライターはこんな工夫をしています。

テクニック① エピソードファーストで書く

章や節の最初にエピソード(具体的な例)を配置すると、その先の総論や抽象論が読みやすくなります。この手法をエピソードファーストと言います。

世界的なベストセラー、日本でも100万部以上売れた『FACTFULNESS(ファクトフルネス)』(ハンス・ロスリング/日経BP)は、まさにエピソードファーストで書かれた名著です。

この本は、「世界をとりまく多くの“事実”とされていることは実は事実ではなく、勝手な思いこみであることが多い」ことをこれでもかと並べている書籍です。が、最初から「貧困率は減り続けている」「人口は思ったほど増加していない」「犯罪発生率はどんどん減っている」と事実やデータを突きつけられると、拒否反応も生まれますし、読み進めるのに体力がいります。

この書籍の素晴らしいところは、導入がすべて、私たちの身近にあるエピソードから始まることです。読者にとっては、事実よりもデータよりも、ある人に起こった(そして自分にも起こるかもしれない)興味深いエピソードのほうが、読みやすいものです。

そのエピソードで何ページか本をめくってもらえたら、本を読む推進力がつきます。そこで本題に入る。これが読みやすさにつながります。

意識して見ていくと、この「エピソードファースト」で書かれた書籍がたくさんあることに気づきます。実は私の著書『本を出したい』も、前著『書く仕事がしたい』も、各CHAPTERの始まりはエピソードからスタートしています。