「部長のご意向伺い」ではダメ

「こんなふうに回りくどいことをせずに、表で情報を整理した段階でI部長に相談したほうが早いのでは?」と思われた方も、もしかしたらいるかもしれません。それは違います。

いえ、今回のI部長からの指示に、特に企画要素がなく、ただ「言われたことをやる」ことを求められているのであれば、表で情報を整理した時点で足りない情報を聞きにいくのは正解でしょう。

しかし、今回は、多分に企画要素を含んでいます。表の埋まっていない箇所や“?”の箇所について、I部長がすでに何かを決めているということはなく、言ってしまえばまだ誰も正解を持っていない状態です。

その状態で、ただ情報を整理しただけのものを持っていっても、I部長としては、「少しは頭を使え!」と思うだけです。

もう少しI部長が親切ならば、「自分で考えた上で、最良だと思う提案をしてこい!」と言ってくれるかもしれません。

実際、情報を整理しただけの表を持っていくと起こるのは、「部長のご意向のお伺い」。部長に決めてもらおう、という考えが透けて見える、責任を放棄した思考です。

行き当たりばったりの企画になってしまう

確かにそれで決まることもあるかもしれませんが、いくらI部長が優秀なビジネスパーソンだとしても、いきなり目の前に表を出されて、「ここはどうしましょう?」と聞かれていくのでは、論理的思考はできません。

その場その場でなんの根拠もなく決めていかざるを得ないでしょう。

そうしてできた企画そのものも、行き当たりばったりなものになってしまうというのは言うまでもありません。

そうして、「部長に決めてもらった、いまいちな企画」ができてしまえば、部下としてはもう何もできません。

「部長に決めてもらった」以上、いまいちな点を見つけたとしても、今さら何か意見を言うのは難しい。

「本当にこの企画で、目的を達成できるだろうか」と疑問に思ったとしても、後の祭りです。

「つっこみどころのない完璧な企画」を目指す必要はない

そうならないように、自分なりに「たたかれ台」を作っておく。

その際には、なるべく根拠となるデータや、なぜその提案をあなた自身がいいと思うのかを客観的に示せる資料(=効果分析表)を作っておく。

そうしてからI部長にたたいてもらうことで、よりよい提案ができるのです。

池田昌人『仕事は1枚の表にまとめなさい。』(日経BP)
池田昌人『仕事は1枚の表にまとめなさい。』(日経BP)

企画提案で目指すべきは、「つっこみどころのない完璧な企画」を自力で立てることではありません。

自分より優秀な人(ここではI部長)の知恵をうまく借りて、表の「目的」をよりよい形で達成することです。

その過程では、この「たたかれる」というプロセスは必須です。

たたかれることによって、アイデア自体が磨かれるだけでなく、あなた自身の企画力も上がっていくでしょう。

「たたかれること=悪いこと」と思わずに、ぜひやってみてください。

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