「仕事ができると思わせたい」場合に起こりやすい

あなたはそろそろ苛立っているはずです。そしてこう言います。

「そのご説明はもう結構です。サブスクリプションのことはわかっていますから。それより来年度から施行される新しい税制への対応はどうなっているんですか?」

つまり、この営業担当者は、あなたが知りたがっていた肝心の新しい税制への対応状況への説明をせず、親切だと思い込んで何もかも説明をしようとしてしまったのです。

「いい人に思われたい」「仕事ができると思わせたい」「信用されたい」「気が利く人だと思われたい」「知識があると思わせたい」などという承認欲求を満たせるチャンスを待ち望んでいた場合に起こりやすい状況です。

もう一つの例です。あなたと友人たちが渋谷で集まり、お昼になったのでどこかこのあたりで食事をしようという話になりました。そこで「メキシコ料理がいいね」と意見がまとまりかけたときです。当然、渋谷界隈でお店を探そうとなったのですが、友人の一人が次のように話し始めました。

「今、その説明いる?」と思われる

「メキシコ料理いいねー。この間ね、六本木の○○っていうメキシコ料理店で食事したの。それがすごく美味しくて。お店の内装もいかにもメキシコっぽかったし、途中でマリアッチ(メキシコ民俗音楽を演奏する楽団)の生演奏も聞ける……」

友人たちは一瞬不快な表情をして、「それは素敵ね!」などと口先ではあいづちを打ってはいます。そして一人が「その店の話は今度にして、今はこのあたり(渋谷界隈)のお店を決めなくちゃね」と本来の目的に軌道修正としました。

これも確かに親切なつもりかもしれませんが、「今、その説明いる?」と思われてしまうでしょう。この例は「経験豊富と思わせたい」「羨ましがられたい」という承認欲求を満たせるチャンスを待ち構えていたため、キーワードが出ただけでその話の主旨を忘れて話し始めてしまったのです。

承認欲求を自覚していないと、親切で説明しているつもりでも、実は自身の欲求を満たすために話している場合があります。そうすると、相手は知識をひけらかしている、マウントを取っていると誤解するので気をつけましょう。