定年後に必要な心構えは何か。医師の石井洋介さんは「60代以降は、社会的役割を失ってしまったときにどう立ち回るかというのが大切な課題だ。その解決策として、介護に関わってみるというのは、自分にとっても社会にとっても有意義なアクションになる。大高齢化、大介護時代を迎えたら、今後、うんこは『見て、触らなければいけないもの』に変わっていく。60代からは『誰かのうんこを見に行こう!』の精神が必要である」という――。

※本稿は、石井洋介『便を見る力』(イースト・プレス)の一部を再編集したものです。

おむつを手に持って見つめる年配の女性
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うんこをタブー視するのは、そろそろやめよう

コレラやペストといった感染症で人が大勢亡くなっていた時代は、うんこは病気の原因となる危険な存在でした。

そこで「うんこは汚いものである」と教育され、排泄後はすぐ下水道に流して手を洗うことが徹底されてきたのです。その結果、うんこは汚いものとしてタブー視されるようになっていきました。

しかし、現在のように感染症に対する医療体制が整った状態で、きちんと管理されていればうんこは危険なものではないのです。

以前、「トイレでスマホをいじると汚くて危ないのか?」という取材を受けたことがあるのですが、結論としては基本的に危なくはありません。

もちろんうんこから飛び出す菌がスマホにつくことがあるかもしれませんが、菌の多くは、皆さんが普段触っている机やPCにも大量についています。世の中には常在菌と呼ばれる菌がたくさん存在していて、この世は思った以上に細菌だらけなのです。

TVドラマ等で白血病の患者さんが無菌ルームといわれる部屋に入っているところを見たことがある方もいると思いますが、常在菌によって感染が起こるほど体が弱っている場合はそうしないと防げません。

ちょっと洗ったり消毒したりする程度では、菌はすぐに増殖し元通りになるのです。超高齢になると常在菌によって肺炎や尿路感染症を起こすこともありますが、自宅を無菌ルームにすることは現実的ではありませんし、それはもう体がこの世界に対応できなくなってきている、天寿が近いことを示すサインなのだと思います。