中高年で初めて診断されることもあるIBS(過敏性腸症候群)とは、どう付き合えばいいか。医師の石井洋介さんは「IBSは内臓に病気があるわけではなく主に精神的なストレスによって起こるため、仕事や家庭でライフワークバランスが取りにくい50代になりちょっとした『便漏れ』が気になってきた、という方は意外に多い。大腸でガスを発生させ、お腹を張りやすくする『高FODMAP食』の大量摂取はIBSの症状を悪化させる可能性があり、反対に低FODMAP食はIBS症状の改善につながるともいわれる。『高FODMAP食』には、便秘解消のために食べるヨーグルトや蜂蜜も含まれている」という――。

※本稿は、石井洋介『便を見る力』(イースト・プレス)の一部を再編集したものです。

ヨーグルトの入ったボトルをお腹の前で持つ女性
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50代で増える「便漏れ」の根本原因

以前『タイムマシンで戻りたい』という本を日本うんこ学会で出版しました。いろいろな人の「うんこ漏れ体験」を集めた本で、読んでいただくとわかるのですが、意外と人って漏らしているんです。

かくいう私も潰瘍かいよう性大腸炎の影響で、よくお漏らしをしてきました。だからこそ身につまされてわかるのですが、うんこを漏らした話というのは誰にも言えない、つらく孤独な経験だと思います。

この本を読んでくださっている皆さんも、実は生涯で1度や2度くらいは「便漏れ」経験があるのではないでしょうか。最近では便漏れに関するガイドラインも出てきており、中には改善可能な便漏れがあることを、ぜひ知っておいてほしいです。

特に私がこれまでうんこに関するいろいろな悩みを抱えた患者さんを見てきた中で意外に多いのが、50代になってちょっとした「便漏れ」が気になってきた、という方です。年齢的に、老化による便失禁にはまだ少し早い。

加齢によって消化酵素が減ってきているせいで、若い頃には大丈夫だった脂っこいものを食べても下痢しやすくなったという可能性はありますが、特に暴飲暴食をしているわけでもないのに下痢が続く場合には、IBS(過敏性腸症候群)という病気が隠れている可能性があります。

IBSとは、ストレスによって腸の動きが活発になってしまう疾患です。突然の腹痛や下痢、便秘を繰り返すのに、検査をしても体に異常は見つからない。そんな場合はIBSを疑ってみましょう。