うんこは「見て、触る」時代へ突入する

もちろん、明らかに感染症を持った患者さんのうんこの場合は別です。たとえば冬場のひどい下痢はノロウイルスに感染している可能性があります。こうしたウイルスは糞便の中に入って感染していくため、トイレをしっかり消毒洗浄し、手洗いも徹底する必要があります。

トイレを流すときには周りにウイルスを撒き散らさないために蓋をしましょう。さらにノロウイルスはアルコール消毒では死なないため、感染している方がトイレでうんこをしたあとは、ハイターのような次亜塩素酸ナトリウムを用いてトイレをしっかり洗う必要があります。

自宅では十分な対応ができると思いますが、公衆トイレなどではどこにどのような菌がついているのかわからないので、素早くトイレを済まして、よく手を洗って出ましょうね(お腹がゆるくてトイレが近い経験を持つ私としては、公衆トイレで用が終わったあとはスマホをいじったりせず、待っている人のためにすぐに出てあげてほしいです)。

こうした例外はありますが、基本的にうんこはそれほど忌避するべき存在ではありません。私たちは、そのことをもっと意識すべきではないかと思います。

なぜなら、大高齢化、大介護時代を迎えようとしている私たちにとって、今後、うんこは「見て、触らなければいけないもの」に変わっていくからです。

介護を始めた人が最初にショックを受けるのは、排便処理によるものだといいます。一方で、前述の通り、多くの人がうんこを見なければいけない時代が到来しようとしています。

私たちはそろそろ「うんこは汚く触れてはいけないものである」という認識を、変えなければいけない時期を迎えているのではないでしょうか。

便漏れは当たり前の社会に

大介護時代を迎え、これからの社会は誰もが「ケアする側」に回らなければ立ち行かなくなっていくでしょう。徘徊はいかいする認知症患者を介護施設に閉じ込めたり、便失禁を白い目で見るのではなく、「それって当たり前だよね」と受け入れられるようになっていかないと、おそらく日本社会は回っていかなくなります。

そのためにはうんこをタブー視せず、「便漏れは当たり前」の社会になっていくこと。「うんこを見ない」社会から、「うんこを見る」社会へと移行していく必要があるのです。

誰もがケアする側に、と言いましたが、現状では特に家庭で親世代を「ケアをする立場」にいるのは圧倒的に女性が多いでしょう。しかし、これからは男性もケアを担うようになっていく必要があります。

車椅子の高齢男性のそばに立つ男性と座って腕に手を置く女性
写真=iStock.com/PRAPAS POOLSUB
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それは、誰もがケアをする側にならなければ社会が回らなくなるから、という理由だけではありません。社会的な役割を失わないため、という側面もあるのです。

60代になると身体機能は誰でも落ちてきます。心筋梗塞・脳梗塞などの血管の加齢に伴う病気や、がんのような細胞の加齢に伴う疾患など、あらゆる病気が出現してくる時期でもありますし、病気とは無縁な方も、若い頃と比べて身体機能は明らかに落ちていく。