4歳の三女を虐待し、脳ヘルニアで死亡させたとして傷害致死罪に問われた43歳の母親に、津地裁は懲役6年の判決を言い渡した。この母親は、三女をアパートの浴室で孤立出産したあと、熊本県熊本市にある「赤ちゃんポスト」に預けた。だが、自らの意志で三女を取り戻し、育てていたという。ノンフィクションライターの三宅玲子さんが事件の背景を取材した――。(第2回)

第1回から続く)

胎児の形に切られた紙を持つ手
写真=iStock.com/Ildar Abulkhanov
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「あなたの子どもに対する思いを疑ってはいません」

「私たちとあなたは、裁く側と裁かれる側として向き合ったわけですが」

裁判長は中央の席に座る被告に向かって語りかけた。

3月8日午後3時、三重県の津地方裁判所301号法廷。昨年5月に起きた4歳児虐待死事件の判決が、裁判長から母親である被告に告げられようとしていた。

「まず、私たちはあなたの子どもに対する思いを疑ってはいません」

こう伝えると、裁判長は続けて、亡くなった三女を差別的に扱いネグレクトや暴行を加えたことや、育児が思い通りにいかないために振るった暴行は、許されない行為だと断じた。

裁判長からは、被告の孤立状態に対し理解を示す言葉も聞かれた。そして、計画的な犯行によるものではなく、突発的な暴力が原因だったとも述べると、裁判長は、犯行を「中度から軽度」とみなした。懲役8年の求刑に対し、判決は懲役6年だった。

女性が自ら孤立出産に突き進むことはない

この日、グレーのジャケットとチャコールグレーのスラックスを身につけた被告は、法廷後方の扉から弁護人に付き添われて入廷した。一時保釈されて娘たちと過ごす時間を持ってからこの日を迎えたのだろうか。さっぱりとした表情は心が整理されていることを想像させた。

それでも裁判長がかけた次の言葉は虚しかった。

「孤立出産などという無茶なことをしないで、もっと自分を大事にすることを覚えてほしい」

人情味の感じられる聞こえのよい言葉ではある。だが、そもそも誰かに相談することができていれば、被告は女性にとって人生でもっとも恐ろしい事態(=孤立出産)に突き進むことはなかっただろう。被告は三女だけでなく、次女も孤立出産した経験がある。ひとたび妊娠した女性にとって、1人で出産に至ることは死に等しい、想像すらしたくない事態だ。

「ひとに甘えることを学んでほしい」
「社会に戻ったら、支えてくれるご両親にちゃんと頼りなさいね」

こうも裁判長は諭した。