ハマス・イスラエル紛争とイラン・アメリカの関係

ハマスとイスラエルの戦いに終結の兆しが見えない。昨年、本連載では「第3次世界大戦へつながる破滅の道」という最悪のシナリオを想定した。昨今の情勢を考慮すると、1歩どころか2歩もそのシナリオに近づいている。

イスラエルの戦車(2011年撮影)
写真=iStock.com/chameleonseye
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世界は、破滅の道を突き進むのか。鍵を握るのは、ハマスとイスラエルの戦いへのアメリカの本格参戦である。

1月28日、ヨルダン北東部の米軍基地にドローンによる攻撃があり、米兵3人が死亡したとアメリカ政府当局が発表した。攻撃したのは、イラクの武装組織「神の党旅団(カタイブ・ヒズボラ)」と見られている。イスラエルとハマスが昨年10月に衝突して以来、中東では米軍基地がたびたび攻撃されていたが、米兵の死者が出たのは初めてだ。

2月8日、こんどはアメリカ軍がイラクの首都バグダッドに、イギリス軍と共同でドローンによる「報復攻撃」を行った。この攻撃で、神の党旅団の司令官を含む3人を殺害している。

ここで問題なのが、神の党旅団の後ろにはイランがいることだ。両勢力の報復攻撃がエスカレートすれば、今後アメリカとイランの直接戦闘に発展していくおそれがあるからである。

最高指導者アリー・ハーメネイー氏率いるイランが支えるのは、神の党旅団だけではない。ガザのハマスや、レバノンのヒズボラも後ろ盾はイランだ。また、イエメンの反政府勢力であるフーシ派も、イランの支援を受けている。

一方、イスラエルの後ろにはアメリカが控える。アメリカとイランが事を構えるなら、「世界最強」の軍隊を擁するアメリカ優位と見る向きが多い。

【図表】中東地域の関係図

しかし、アメリカの参戦で戦闘に決着がつくと考えるのは大間違いだ。アメリカ軍はそのイメージとは裏腹に、ベトナム戦争以降は敗戦を重ねている。