「ほめるところが一つもない社員」にはどう対応するべきなのか。人事コンサルタントの難波猛さんは「『ほめるところがない』のは、『こいつはダメだ』と決めつけている上司のスタンスやバイアス(偏見)の問題であることが多い」という――。(第2回/全2回)

※本稿は、難波猛『ネガティブフィードバック 「言いにくいこと」を相手にきちんと伝える技術』(アスコム)の一部を再編集したものです。

親指を立てるビジネスマンのイメージ
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ポジティブなフィードバックの重要性

ネガティブフィードバックの効果を高めるのが、日常のポジティブなフィードバックです。ポジティブフィードバックとは、「ほめる」「認める」「注目する」「感謝する」などですが、わざわざ面談の時間をとる必要はありません。

仕事をしているときや仕事が終わったときに、「今回の企画書、よく整理されていてわかりやすいね」「昨日は急な対応ありがとう」「さっきのミーティングでのあの質問は良かったね」などと、上司から見て、いいなと思ったことに「良かったです」「感謝しています」と声をかけるだけでいいのです。イメージとしては、部下の言動について「イイね」ボタンを押すイメージです。

それだけで、自分の行動により承認欲求と帰属欲求が満たされた部下は、心が前向きになり、その行動をくり返したくなります。行動の強化だけでなく、上司に対する親近感や信頼感も増すことになります。

部下が素直に耳を傾けてくれる「ゴットマン率」

私は、フィードバックの割合は、ポジティブ4以上、ネガティブ1以下の割合を意識してください、とお伝えしています。ワシントン大学名誉教授ジョン・ゴットマン博士が研究した、人間関係におけるポジティブ・ネガティブの適切な比率「ゴットマン率」によると、「親子3:1」「上司部下4:1」「夫婦5:1」「友人8:1」と言われています。

コンサルティング現場の実感値としても、4:1くらいの比率が適切だと感じています。これよりネガティブが増えると部下が委縮して不信感が増えて、離職や意欲低下のリスクを招きます。普段、部下の良い面をしっかり見てポジティブな評価を伝えている上司であれば、必要なときに厳しい指摘を伝えても部下は素直に耳を傾けてくれます。