人間の幸福感を向上させる5つの要素

「ポジティブ心理学」で有名なマーティン・セリグマン博士が、「ウェルビーイングを高める5つの要素」として「PERMAモデル」を提唱しています(マーティン・セリグマン『ポジティブ心理学の挑戦』、ディスカヴァー・トゥエンティワン)。

Positive emotion:前向きな感情
Engagement:仕事や趣味への没頭・没入
Relationship:良好な人間関係
Meaning:取り組むことへの意味づけ・意義づけ
Accomplishment:目標の達成

部下と良好な人間関係を構築し、前向きな感情・仕事への意味づけ・熱中できる業務体験・達成経験の積み重ねを促すことで、部下の幸福感は向上していきます。

理論的に正しいフィードバックであっても、常に自分を否定してくる嫌な相手の言葉は刺さりません。だからこそ、日頃から手練手管ではなく真摯しんしな興味を部下に持ち、良い言動を見つける、ほめる、認めるなどのポジティブフィードバックを心がけることが大切です。

プレイヤーとして優秀だった上司ほど要注意

ポジティブ4、ネガティブ1が理想と言いましたが、実際の現場ではポジティブ1、ネガティブ4になっている上司はたくさんいます(たまに、ポジティブ0:ネガティブ10の上司もいます)。

特に「プレイヤーとして優秀だった」「現在、自分もトッププレイヤー兼務」のプレイングマネージャーや、「ミスが許されない」「数字や納期のプレッシャーが大きい」部門の上司、「部下のミスや失敗など、できないことばかりが気になる」減点主義や完璧主義タイプの上司が陥りがちです。

様々なプレッシャーに日々さらされている上司としては、部下の行動の足りない点・変えて欲しい点が目につきやすいのは仕方ないことです。ただし、気に入らないことが目に入ってくる度に、重箱の隅をつつくようにネガティブな言葉を投げ続けると、部下のモチベーションに確実に悪影響を与えます。

人は自分の言動を否定され続けると、「私は何をやってもダメなんだ」「何をしても意味がない」「この人には何を言っても無駄」と「学習性無力感」が生まれます。学習性無力感を感じた部下は、自分から変わろうとする意欲が失われ、上司から言われなければ動かなくなります。

「指示待ち部下が多くて困る」という会社には、指示待ちの部下を量産する「細かい指示とダメ出しを続ける」上司や経営者がいます。細かい指示を出せば出すほど、会社が望まない指示待ち人間が増える悪循環が生まれます。