田舎暮らしとも首都圏での暮らしとも違う。利便性も快適さも都心での生活以上のクオリティ、豊かな自然と食生活、仕事はリモートでOK……。定年後でもよし、今すぐでもよし。あなたが知らない地方都市移住の魅力とは――。「プレジデント」(2024年3月29日号)の特集より、記事の一部をお届けします。
立山山と市街地
写真=iStock.com/Sean Pavone
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「地方は不便」という「昭和」の集団幻想

私自身、今は渋谷区に住んでいるのですが、数年内に地方都市に移住するべく、まず土地を買いました。

移住先は、地方都市の都心に近い住宅地で、車がなくても暮らせます。幹線道路から一歩入った静かな環境で、目の前は自然豊かな公園。空港にも駅にも、今の家から羽田や品川に行くより短時間で、しかも座って行けます。それでも地価は、渋谷区内の10分の1。東京で家を買うくらいなら、地方都市に住んで、浮いたお金で毎月のように東京にでも海外にでも遊びに行ったほうが、合理的ではないですか。

そもそも「地方は不便」というのはあまりにも「昭和」な発想です。

東京でも地方都市でも過疎地でも、どこにでも同じコンビニがあり、本でも何でも通販で買えるのが日本です。

スーパーもどこにでもありますが、生鮮に関しては地方のほうが、新鮮で安いことは間違いありません。デパートに関しては、渋谷区の東急本店のほうが、移住先の地場百貨店より先になくなってしまいました。

それに渋谷区などの東京都心の区は、日本で唯一、ホームセンター空白地帯です。同じ東京でも、環状7号線の外の住人にはあって当たり前の存在ですが、「自分は都心居住者だ」と謎の優越感に浸っている人だけが、ホームセンターの便利さを享受できていない(笑)。

地方は医療水準が低い? 地方都市を過疎地と混同してはいけません。各県の中核的な病院のレベルは、東京の普通の病院に勝るとも劣らないのは常識です。おまけに東京ほど混雑はしていないのが、何よりの魅力。

私の知人は、東京の病院で「数カ月待ち」と言われた癌の手術を、故郷の地方都市ですぐ受け、快癒しました。

私も、ある地方都市に講演に向かう途中、足の靭帯を切ったのですが、講演先の地元病院で、待ち時間ゼロで処置を受けることができました。ところが「帰宅後にあらためて最寄りの病院の診察も受けなさい」と指示され、仕方なく行ったところ、都内の病院の整形外科は高齢者で大混雑。3時間も待たされて、診察はたった3分でした。

介護に関しても、都会のほうが有利という話は聞いたことがありません。地価や人件費が高い東京よりも地方都市のほうが、サービスのコスパは高いです。

地方では車がないと生活できないのでは? そのご指摘は重要です。ですが、そうおっしゃる東京在住のあなたは、車なしで生活しているのですか? 「地方は電車が不便なので車に乗るしかない」という話は、昭和の集団幻想ではないでしょうか。都会こそ、駐車場代が高くて道も渋滞するので、仕方なく段差だらけの鉄道や地下鉄を利用している人が多いだけでは。

そんなわけで、東京でも多くの人が車を持っています。ですが車を使うのなら、地方都市のほうがずっと便利です。家のガレージも公道も広いし、大型店や病院には無料の平面駐車場があって、しかも空いている。

私ども夫婦は雨でも風でも歩くのが好きで、車を持たず、必要なときだけカーシェアを使う生活をしていますが、そういう人は都会でも少数派でしょう。そんな私は、地方の移住先を選ぶにあたっても、バスや電車が便利で、歩ける範囲に店や病院、それにカーシェアもある場所を選びました。過疎地だと難しいですが、そこそこの大きさの地方都市の市街地であれば、そういう場所も必ずあります。

【図表】地方都市に住んだほうがいい12の理由
PRESIDENT 2024年3.29号

「プレジデント」(2024年3月29日号)の特集「『定年』の新常識」では、定年後に裕福な人と困窮する人の違いを明らかにする「解明『金持ち定年』への4つの分岐点」、定年駆け込み寺のマネーコンサルによる「定年前後『お金の手続き』」など、準備不足で大損しないための情報を紹介しています。