「俺の金を絶対に増やせるんだな?」

営業の基本は共感力。相手の立場に立つことです。そのためには、自分の心を捨てて、相手の心にベクトルを100%向けなければいけない。恋愛と同じですよ。例えば女性を口説くときは、まず「どんな食べ物が好き?」と相手の好みを聞きますよね。「オレは焼き肉を食べたい」などと自分の希望ばかり主張していては終わりです。

ところが、売れない営業マンほど、「いい商品だから買ってください」という商品説明ばかり。いい商品かどうかは営業マンではなく客が決めるもの。なのに、売れないトラウマがあるせいか、その日のうちに売ろう、売ろうとする。ベクトルが自分のほうばかり向いていて、自分を捨て切れていない。これでは共感は生まれません。

1億円倶楽部(株)代表取締役 
江上 治氏

私は有名スポーツ選手から経営者まで、年収1億円超のクライアントを50人以上抱えていますが、彼らは皆ワガママ。同じコーヒーでも、200円のスタバではなくリッツ・カールトンの2000円。この差額は、心地よい空間を提供するサービス料です。そんな環境に慣れている彼らは、「ここまで尽くしてくれるか!」という感動がなければ心を開きません。普段からいろんな人が近寄ってきますから、非常に用心深く、何かを売りつけられるのを強く警戒します。目に見えない金融商品ならなおさら。「こいつに預けて大丈夫か?」という疑いの目で見ます。

まず、彼らの心を開かなければなりません。ですから、私は商品の話は一切しません。相手が私にどんなことを期待しているか、何を欲しているかのリサーチとヒアリングを、事前に時間をかけて徹底して行います。秘書や受付、会社のナンバーツーらにその人の性格や欲していることを聞き込み、本を出していればそれを読んでおく。こうした一歩目のアプローチで、勝負の9割は決まります。