ソニーのEV進出は必然。「対応力」がなければ淘汰される

「一時期必死に勉強しておけば、それで安泰」という時代は、すでに遠い過去になりました。

終身雇用はもはや期待できないばかりか、ひとつの会社に勤め続けたとしても、その会社がある時期から、まったく別のことをする会社に変わってしまうこともあり得ます。

有名な例を挙げると、日立造船という会社は、その名に反していまでは船をつくっていません。現在、主力としているのは環境・プラント事業です。

最近、ソニーがEV(電気自動車)ビジネス参入を表明して話題になりましたが、この参入は無謀なことではありません。

自動車の生産において、開発にもっとも費用がかかるのはエンジンです。

一方、電気自動車はエンジンではなくモーターで動きます。モーターはエンジンよりもはるかに開発費用が安いので、電気自動車の生産は比較的参入が容易です。テスラのような新興の会社が、この分野で急成長することができたのもそのためです。

電気自動車の開発は、電池部分の軽量化がカギになりますから、電池の技術が優れている日本の大手電機メーカーなら、参入にはかなり有利です。私が大手電機メーカーの社長だったら、すでに数年前には電気自動車の生産に乗り出していたと思います。

販売は家電量販店で行えば、自動車ディーラーも不要です。たいていの家電量販店には、自動車ディーラーよりはるかに広い駐車場がありますから、その一角にブースをつくって販売やアフターサービスを行えば済むことです。

アフターサービスさえ心配なければ、車は安く買えるに越したことはありません。いまアメリカや中国ではインターネット通販で車を購入できます。日本でも、アフターサービスを手厚くすることで、家電量販店との差別化をはかっているジャパネットたかたのような通販会社が、車を売ってアフターサービスまで手掛けることも非現実的とは言えません。

そのように考えれば、近い将来、ソニーのように電機メーカーが電気自動車メーカーに、家電量販店や通販会社がその販売業者になるということも、十分考えられます。

ジャパネットたかたにしても、もともとはカメラ販売店でした。豊富な品揃えで知られるアマゾン・ドット・コムはインターネット書店からスタートしています。

会社の事業内容が大きく変わるということは特別なことではなく、これからの時代はそうした変化がさらに多くの分野で起きることが予想されます。そのような変化に対応できない人は、学歴などに関係なく淘汰とうたされることになります。

変化に対応できるのは学習能力がある人

今後、どんなスキルや能力が求められるようになるのかは、いまの時点ではまったく予測できません。

ただ、これから多くの仕事が人工知能(AI)に取って代わられることが予測される中、価値が高くなるのはおそらく営業のスキルではないかとも考えられます。

どんなに優秀で見た目のいい接客用ロボットができたとしても、大多数の人はロボットにセールスされるより、人間から買いたいと思うものだからです(この心理だって、将来は変わるかもしれませんが)。

商談で握手するビジネスマン
写真=iStock.com/franckreporter
※写真はイメージです

また、ものをつくる技術力よりも、消費者が欲しいものは何かを考える能力の価値が、今後いっそう高まるとも考えられます。

あるいは突然、反AI、反機械という自然回帰のようなムーブメントが起こって、消費構造そのものが大きく変わってしまうかもしれません。

どんな能力を備えておくのが正解かはわかりません。少なくとも、その時点で必要とされることを学習する能力があれば、どんな変化が起きても対応できます。その意味ではやはり勉強してきた人、勉強の「やり方」を知っている人のほうが有利なはずです。