激動の時代を生き抜くにはどんな能力が求められるか。医師の和田秀樹さんは「この国において唯一のチャンスとも言えるポイントは、『金持ちの子どもが勉強しない』ことだ。世界の先進国の中で、その国の代表的な名門大学に小学校からエスカレーターで行ける国は日本だけで、金持ちほど喜々としてそういう学校に子どもを入れている。しかし、受験をしないと『リスクヘッジをしないと問題が解けない、勝てない』という感覚が身につかない。それでは『勉強していない金持ちのボンボン』は勉強している『頭のいい人』にだまされて、簡単に足元をすくわれる」という――。

※本稿は、和田秀樹『頭がいい人の勉強法』(総合法令出版)の一部を再編集したものです。

疑問符に包まれた思考
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生産性を重視して余剰人員の首を切る経営へ転換したツケ

終身雇用、年功序列が普通だったかつての時代は、誰もがそこそこ安定した一生を送ることができました。そういう意味では、戦後の日本はいい時代でもありました。

学歴でほぼ一生が決まってしまうため、受験戦争は熾烈しれつでしたが、そこでひとまず勝ちをおさめておけば、いい会社に入ってそれなりに出世する人生が約束されていました。

たとえ受験に失敗して高い学歴が得られなかったとしても、終身雇用の枠組みに残りさえすれば、ほとんどの人は定年間際には1000万円近い年収を得ることができました。

高卒で自動車の販売員からBMW東京の社長にのぼりつめ、その後ダイエーの会長などを歴任した林文子・前横浜市長のように、有能であれば学歴に関係なく勝ち上がることも可能でした。

雇用や収入が比較的安定していたため、人々の消費も活発で、景気もよかったのです。それがバブル崩壊を経て、多くの企業が生産性を重視して、余剰人員の首を切る経営へと転換し、勝ち組と負け組の格差は拡大していきました。

その結果、消費が冷え込み、人口減少もあいまって、生産に対して消費が少ない状態に陥りました。それでもなお、企業は生産性重視の経営を進めています。そして雇用不安から人々はいっそう消費を切り詰め、いつまでたってもデフレから脱却できないという、ひどい社会になってしまいました。